━━━ねぇ、大輝。私ね、君がいてくれたらそれ以外何もいらない。
どうして昔みたいに笑いかけてくれないの?
君の1番近くに居たいのに。
好きなんだよ?大輝━━━。
背後から聞こえた怯えたような声。
声のした方を見るとクラスメイトの女子が目を伏せがちにプリントを差し出していた。
勉強時間調査票は、日直の私が集めて先生へ提出する予定。今日中までだから別になんの問題もない。
そう言いプリントを受け取る。
すると女の子は恐る恐る尋ねてきた。
なんでそんな質問されるのか分からずにそう答えれば、女の子は顔をゆがめてその場を去った。
するとすぐさまさっきの女の子と女の子の友達と思われる人の話し声が聞こえてきた。
丸聞こえだ。
いつからかは分からないが、私は『 ロボット美人』と呼ばれるようになった。
無表情で感情がない。誰がつけたのか知りもしないが、こんなにつまらないことを考える人もいるもんだと思う。
周りにどう思われようが知ったこっちゃない。周りのヒソヒソ声を無視して、私はお弁当を抱え教室を出た。
屋上の景色の中に、フェンスを背に座り込む大輝。染めたことのない黒髪にすっと通った鼻筋と細い目。スラリとした長い手足。その姿は今日も相変わらず不健康そうだ。
ドアを開ける音に気がついたのか気だるげにこちらを向く大輝。
私を見つめる瞳には呆れの色を滲ませた。
その目はいつも私を息苦しく圧迫する。
今日はいつもより早起きして頑張った。
懸命に弾ませた声とは別にまるで拒絶するような声。
そう言われてしまっては引き下がるしかない。
そう言い残し屋上を出てドアを閉める。ため息をつき重い空気を吐き出す。何回拒絶されても毎日お弁当を作ってくるのだ。いつか一緒に食べてくれるって信じて。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。