ハラジュク・ディビジョンにつき、車を近くの駐車場に止めて、外に出る。竹下通りの傍まで行くと、エーデュース達が「人多っ!」と驚く。
人気の無い道を歩いていき、途中途中見たことの無いものや、変わったお店を見つけては寄り道をする。
通りすぎる人達が時折こちらをチラ見するが、目立つのも無理ないだろう。この人数だし、メンツがメンツだ。
アズール君が最後に何か呟いた気がしたが、俺達には聞こえず、アズール君の隣にいた双子が「今日ぐらいはいいんじゃない?」みたいなことを言っている。
どうやら、アズール君は体重を気にしているらしい。話がまとまった所でロールアイス専門店に行き、外に置かれているメニューを立ち見し、それぞれ食べたいものを選ぶ。
ウランがスマホのノートにメモした商品名と、皆が選んだ商品が合っているかを確認して店内に入る。流石に一人で全員分は持てないので、誰かに持つのを手伝ってもらうつもりだ。因みに、グリムは「これがいいんだゾ!」と周りに見られないよう商品を選び、ユウ君が「なら僕もそれにするから半分しよう。じゃないとお金もかかるし、グリムが食べてる姿を他の誰かに見られる訳にも行かないし」と妥協した結果、グリムも不満そうではあったが「分かったんだゾ」と受け入れた。
ウランが自身の頼んだアイスとセンバのアイスを持つ代わり、センバは他二人分のアイスを手にしており、そのアイスをアズール君とジェイド君に渡す。二人は「ありがとうございます」とお礼を言い、エース君は自身の頼んだアイスとは別に持っていたアイスをデュース君に渡す。続けて俺も片手に持っていたアイスをユウ君に渡した。フロイド君に関しては……既に食べ始めていた。早いな。
グリムもアイスを食べるので、人目がつかない場所へと更に移動する。
後輩組の横では、オクタヴィネル寮の三人がウランのスマホで撮ったロールアイスの作り方の動画を観ている。フロイド君はお店でも生で見ていたのだが「こんな風に作ってんだ。おもしろ〜」と興味ありげな様子だった。
アイスを食べ終えたあとは、表参道やブラームスの小怪、避けていた竹下通りもチラッと寄った。色とりどりの一風変わった服屋や、食べ物屋が建ち並び、人目を引くような個性豊かな衣装を纏った人達がいたりと、今日もハラジュクの街は若者や観光客を中心に賑わって居た。
車を停めてある駐車場まで行こうとするが、近くから女性の悲鳴が聞こえ、全員一斉に声がした方を振り向く。
声が聞こえた場所の近くまで行くと、一人の女性が地面に座り込んでおり、目の前には三人の男性が立っている。そのうちの一人が別の女性を捕まえていて、三人共違法マイクを手にしていた。しかも、マイクは男性達が手に持っている三本だけではない。地面にも数本落ちている。
周りがざわついてるせいで聞き取りづらかったが、男性は確かに“上”と言っていた。普段聞き間違い激しい俺だが、男性達の声は周囲の騒音に軽く掻き消されているだけで特に小声で話しているわけでもなければ、テンパってるせいかむしろ普通より大きめの声で話していた。なので、ウラン達にも会話の内容が聞こえていた。
嫌々ながらもセンバは腰にかけているマイク専用の入れ物から自分のヒプノシスマイクを取り、「おい」と男達に声を掛け、前に出た。ユウ君達は「せ、センさん……!いきなりは危ないんじゃ……!」とヒヤヒヤして居る。待っていれば近くの交番から警察が駆け付けてくるかもしれないが、男達がこちらを見ていない隙にウランが念の為電話で通報する。
と言っても、俺達も“警察みたいなもの”だが。
俺とウランが話をしていると、エース君が寄ってきて「これ、大丈夫なんすか!?」と聞いてくる。オクタヴィネル三人の方は平然……と言うより、何処か楽しんでいるようだ。
断る為に口から出てしまった言葉だが、本来俺は“〜すべき”みたいな台詞は滅多にはかないし、自分から責任を更に負うような発言だってしない。でも言ったからにはやるしかないのだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。