第32話

第四章 三話 ハラジュク・ディビジョン
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2021/01/23 11:04
ハラジュク・ディビジョンにつき、車を近くの駐車場に止めて、外に出る。竹下通りの傍まで行くと、エーデュース達が「人多っ!」と驚く。
盧守 海藍(ウラン)
盧守 海藍(ウラン)
僕達の街、ハラジュク・ディビジョンへようこそ!
詠永 零熾
詠永 零熾
この人数であの人の群れを行くとなると、はぐれそうですし……道案内なら僕に任せて下さい
十字風 染覇(センバ)
十字風 染覇(センバ)
ヨミはここら辺来た際に一人散歩して道に詳しくなったからなぁ
人気の無い道を歩いていき、途中途中見たことの無いものや、変わったお店を見つけては寄り道をする。
通りすぎる人達が時折こちらをチラ見するが、目立つのも無理ないだろう。この人数だし、メンツがメンツだ。
詠永 零熾
詠永 零熾
そういえば近くに美味しいと評判のロールアイスの専門店がありましたね。寄ってみます?
デュース・スペード
デュース・スペード
ロールアイス?
エース・トラッポラ
エース・トラッポラ
そんなのあるんすか
十字風 染覇(センバ)
十字風 染覇(センバ)
店によっちゃああんま美味しくないとこもあるから要注意だけどな。今から行くとこは美味しいよ
盧守 海藍(ウラン)
盧守 海藍(ウラン)
皆アレルギーとか、甘い物苦手とかはない?
アズール・アーシェングロット
アズール・アーシェングロット
僕達はありませんが……カロリーが……
アズール君が最後に何か呟いた気がしたが、俺達には聞こえず、アズール君の隣にいた双子が「今日ぐらいはいいんじゃない?」みたいなことを言っている。
アズール・アーシェングロット
アズール・アーシェングロット
その考えが危ないんですよ……。主に僕の様に食事や栄養バランス気にしてる人からすればね
ジェイド・リーチ
ジェイド・リーチ
アズールなら大丈夫でしょう?一度ハメを外した程度で、これからの食事の摂り方を偏らせてしまうなんてことは無いと思いますが
フロイド・リーチ
フロイド・リーチ
そーそー。つか、太ったらまた痩せりゃあいいじゃん。アズールなら出来るでしょー?
アズール・アーシェングロット
アズール・アーシェングロット
簡単に言いますねぇ……。勿論そのつもりですが。まぁ、折角の異世界ですからね
どうやら、アズール君は体重を気にしているらしい。話がまとまった所でロールアイス専門店に行き、外に置かれているメニューを立ち見し、それぞれ食べたいものを選ぶ。
ユウ(監督生)
ユウ(監督生)
わぁ〜……!色んなのがあって迷うなぁ
デュース・スペード
デュース・スペード
本当にロール状だな。見た目も可愛らしいし……
エース・トラッポラ
エース・トラッポラ
ケイト先輩ならマジカメ映えしそ!つって写真撮るだろうなー。俺も撮ってマジカメにアップしたいけど、異世界の食べ物だからなぁ。SNSで異世界に行きましたーなんて書けないし、写真撮るだけにしとこ
アズール・アーシェングロット
アズール・アーシェングロット
いかにも、若者……主に女性人気が高そうな商品ですね
フロイド・リーチ
フロイド・リーチ
店ん中で作ってるとこ見れるらしいし、俺もエイちゃん達と一緒に行ってくる〜
ジェイド・リーチ
ジェイド・リーチ
他のお客様も並んでいる上に、この人数で押しかけるのは迷惑でしょうし、僕は外で待っています。お手数ですが、ヨミさん代わりに注文お願い出来ますか?
詠永 零熾
詠永 零熾
はい、いいですよ
盧守 海藍(ウラン)
盧守 海藍(ウラン)
皆が選んだロールアイス、携帯のノートにメモしたけど、これであってるかな?あ、作ってる場面は僕が動画とって、見れなかった子に後で見せてあげるね〜
ウランがスマホのノートにメモした商品名と、皆が選んだ商品が合っているかを確認して店内に入る。流石に一人で全員分は持てないので、誰かに持つのを手伝ってもらうつもりだ。因みに、グリムは「これがいいんだゾ!」と周りに見られないよう商品を選び、ユウ君が「なら僕もそれにするから半分しよう。じゃないとお金もかかるし、グリムが食べてる姿を他の誰かに見られる訳にも行かないし」と妥協した結果、グリムも不満そうではあったが「分かったんだゾ」と受け入れた。
盧守 海藍(ウラン)
盧守 海藍(ウラン)
おっ待たせ〜
十字風 染覇(センバ)
十字風 染覇(センバ)
はい、どーぞ
ウランが自身の頼んだアイスとセンバのアイスを持つ代わり、センバは他二人分のアイスを手にしており、そのアイスをアズール君とジェイド君に渡す。二人は「ありがとうございます」とお礼を言い、エース君は自身の頼んだアイスとは別に持っていたアイスをデュース君に渡す。続けて俺も片手に持っていたアイスをユウ君に渡した。フロイド君に関しては……既に食べ始めていた。早いな。
グリムもアイスを食べるので、人目がつかない場所へと更に移動する。
デュース・スペード
デュース・スペード
うん。美味い!
エース・トラッポラ
エース・トラッポラ
写真も撮ったし、俺もたーべよ。あ、そうだ、ヨミ先輩ゴチになります!今更だけど
グリム
グリム
上にあるクッキーはオレ様が頂くんだゾ!
ユウ(監督生)
ユウ(監督生)
うん、分かったから落ち着いて食べなよ?
後輩組の横では、オクタヴィネル寮の三人がウランのスマホで撮ったロールアイスの作り方の動画を観ている。フロイド君はお店でも生で見ていたのだが「こんな風に作ってんだ。おもしろ〜」と興味ありげな様子だった。
フロイド・リーチ
フロイド・リーチ
にしても、鉄板の上でアイスを巻こうだなんてよく思いついたよね〜
ジェイド・リーチ
ジェイド・リーチ
ふむ。動画を見るに初めは液状なんですね
アズール・アーシェングロット
アズール・アーシェングロット
異世界なだけあって、僕達の知らない情報も沢山あるでしょうし、今後参考になりそうなものがあれば是非モストロ・ラウンジでも活用していきたいですね
アイスを食べ終えたあとは、表参道やブラームスの小怪、避けていた竹下通りもチラッと寄った。色とりどりの一風変わった服屋や、食べ物屋が建ち並び、人目を引くような個性豊かな衣装を纏った人達がいたりと、今日もハラジュクの街は若者や観光客を中心に賑わって居た。
詠永 零熾
詠永 零熾
いつも思ってますけど人混みしんど
盧守 海藍(ウラン)
盧守 海藍(ウラン)
竹下通り周辺は有名だからねぇ〜。一度は紹介も兼ねて見に行った方が良いかな〜って思ったから寄ったけど……今日も人が多いね
十字風 染覇(センバ)
十字風 染覇(センバ)
ハラジュクの人気の場所は大体見終わったし、お隣のシブヤ・ディビジョン行くか?
ユウ(監督生)
ユウ(監督生)
今度は渋谷ですか……。渋谷も若者中心で人が多いですけど、こっちの世界でも同じなんですか?
詠永 零熾
詠永 零熾
そうですね。シブヤも人が多いですよ。では、駐車場まで行きましょうか
車を停めてある駐車場まで行こうとするが、近くから女性の悲鳴が聞こえ、全員一斉に声がした方を振り向く。
デュース・スペード
デュース・スペード
何だ!?
エース・トラッポラ
エース・トラッポラ
あそこの奥の方ザワついてるな
ジェイド・リーチ
ジェイド・リーチ
揉め事でしょうか?
アズール・アーシェングロット
アズール・アーシェングロット
デジャブを感じる……
フロイド・リーチ
フロイド・リーチ
昨日は変な奴等に絡まれたし、今度は何?
十字風 染覇(センバ)
十字風 染覇(センバ)
ま、今の女尊男卑とも言えるこの世界じゃ……不満溜まりまくってるやつが多いんだよ
声が聞こえた場所の近くまで行くと、一人の女性が地面に座り込んでおり、目の前には三人の男性が立っている。そのうちの一人が別の女性を捕まえていて、三人共違法マイクを手にしていた。しかも、マイクは男性達が手に持っている三本だけではない。地面にも数本落ちている。
十字風 染覇(センバ)
十字風 染覇(センバ)
アレ、違法マイクじゃねぇか。どうやってあんなに手に入れたかはさておき、この状況やべぇんじゃねぇの?
デュース・スペード
デュース・スペード
違法マイクって……確か、昨日ヨミ先輩が言っていた取り扱い禁止のマイクですよね?改造されたヒプノシスマイクとか……
詠永 零熾
詠永 零熾
えぇ、そうです。ラップスキルとマイクの効果によっては病院送りになる人が出るかも知れません。特に、竹下通りの周辺且つ人が多いこの場所で使われたら被害の範囲が……
男2
男2
クソッ……こんな巫山戯た世の中でやってられっか!
男1
男1
やべぇ、早く“持ってかねぇと”いけないのに違法マイクを見られちまった……!
男3
男3
てめぇが余所見なんかして女にぶつかったからだろ!落ちたマイク無視して逃げたら“上”からなんて言われるか……!
チッ……サツが来るかもしんねぇのに!こうなったら、今あるマイク使ってこの場にいる全員を人質にして乗り切るしかねぇ。その間にてめぇらはマイク拾って隠せ!そんで逃げるぞ
周りがざわついてるせいで聞き取りづらかったが、男性は確かに“上”と言っていた。普段聞き間違い激しい俺だが、男性達の声は周囲の騒音に軽く掻き消されているだけで特に小声で話しているわけでもなければ、テンパってるせいかむしろ普通より大きめの声で話していた。なので、ウラン達にも会話の内容が聞こえていた。
アズール・アーシェングロット
アズール・アーシェングロット
“上”が居るということは、彼等は何らかの組織もしくは団体に所属しているのでしょうか?それとも、雇われているのか……
盧守 海藍(ウラン)
盧守 海藍(ウラン)
多分だけど、あの落ちてる違法マイクは売買用じゃないかな?拾わずには逃げられないみたいだし
十字風 染覇(センバ)
十字風 染覇(センバ)
マイク自体にバレちゃあまずい仕掛けがあるかも知んないね
詠永 零熾
詠永 零熾
この辺りは人の行き来が激しい分、周囲に居る人を払う時間もなさそうですし……僕達も早く“仕事”を済ませた方が吉かもしれませんね。貴方の出番ですよセン。啖呵切るのは得意でしょう?貴方、目立つのも好きみたいですし
十字風 染覇(センバ)
十字風 染覇(センバ)
おま……!……ったく。マジで人使い荒いな。んな目立ち方は不本意だっつーの!こっちだってやりたくてやってる訳じゃねぇわ
盧守 海藍(ウラン)
盧守 海藍(ウラン)
日常生活でも悪目立ちしかしないくせに今更何言ってるのさ〜。むしろ、その悪目立ちをここで活用しないで何処で活用するの?
十字風 染覇(センバ)
十字風 染覇(センバ)
うっせーわ!分かったよ!やるよ!
嫌々ながらもセンバは腰にかけているマイク専用の入れ物から自分のヒプノシスマイクを取り、「おい」と男達に声を掛け、前に出た。ユウ君達は「せ、センさん……!いきなりは危ないんじゃ……!」とヒヤヒヤして居る。待っていれば近くの交番から警察が駆け付けてくるかもしれないが、男達がこちらを見ていない隙にウランが念の為電話で通報する。
と言っても、俺達も“警察みたいなもの”だが。
盧守 海藍(ウラン)
盧守 海藍(ウラン)
このままじゃあ集団パニックになるかもね。皆凄く不安そうな顔してるし。無理もないけど
詠永 零熾
詠永 零熾
んー、そこは不謹慎ですけど“エンターテインメント”的な感じで乗り切ったらどうです?僕達は秘密警察である前に“Crazy Kir”ですし。ある程度誤魔化せるのでは?
盧守 海藍(ウラン)
盧守 海藍(ウラン)
そっか!不謹慎だけどそれなら僕がやってみるね!
俺とウランが話をしていると、エース君が寄ってきて「これ、大丈夫なんすか!?」と聞いてくる。オクタヴィネル三人の方は平然……と言うより、何処か楽しんでいるようだ。
アズール・アーシェングロット
アズール・アーシェングロット
魔法は禁止、と仰っていましたが……状況が状況ですし、よければ僕達が手を貸しましょうか?勿論、魔法はバレないように使いますよ
詠永 零熾
詠永 零熾
それは大変助かりますが……後が怖いですねぇ。お気持ちだけ受け取っておきますよ。何せ、僕達も仕事柄こういう事件に巻き込まれるので慣れっこでしてね。むしろ、これは僕達が解決すべき仕事でもありますので、心配には及びませんよ
ジェイド・リーチ
ジェイド・リーチ
おや、残念ですねアズール。ヨミさんもこう仰っていますし、僕達は大人しく見学させて頂きましょうか
フロイド・リーチ
フロイド・リーチ
アイツら絞めたかったけど、エイちゃん達が俺達のこと守ってくれんのー?んじゃよろしくー
断る為に口から出てしまった言葉だが、本来俺は“〜すべき”みたいな台詞は滅多にはかないし、自分から責任を更に負うような発言だってしない。でも言ったからにはやるしかないのだ。
詠永 零熾
詠永 零熾
(なんて台詞も……俺らしくないんだけどさ)

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