第17話

第二章 三話 一日の後半
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2021/01/23 06:59
二人と中華街や赤レンガ倉庫などヨコハマの街を歩き、様々なジャンルのお店を見て回る。
詠永 零熾
詠永 零熾
良さげなのはありますけど、やっぱりスイーツ系が多いですね。お土産
碧棺左馬刻
碧棺左馬刻
そうだな。甘いもんじゃ駄目な決まりでもあんのか?
詠永 零熾
詠永 零熾
そういう訳では無いですけど……デザートとして出せばいいし
入間銃兎
入間銃兎
それより、私達はそろそろ理鶯の元に行かないと行けませんので
碧棺左馬刻
碧棺左馬刻
イイもんあったかは知んねぇが、俺達の付き添いはここまでだ。知ってるとは思うが、ヨコハマの治安は必ずしも良いとはいえねぇ。気ぃつけて帰れよ
詠永 零熾
詠永 零熾
了解です。ありがとうございました
最初にこの二人に会った際は、俺やセンバやウランの正体や性別を知らなかったこともあり、俺達に対しても荒れていた左馬刻サマだったが、ひょんなことから性別や正体を知った際に扱いが丸くなった。
それに加え、何故か左馬刻サマは俺達に対しては面倒見が良くなると理鶯さんも銃兎さんも言っていた。
詠永 零熾
詠永 零熾
(俺達も、こんな仕事してなかったら関わることなかった人種だしな。左馬刻サマは)
今日は下見だけで何も買わないことに決め、帰る前に一人で散歩する。
なんなら、晩飯はこっちで食うか……なんて考えたりしていると、前から歩いてきた女性二人が「もしかして、詠君?」と男子名で呼んでくる。
詠永 零熾
詠永 零熾
(知らない人だし、ファンの方かな?)
ファン2
ファン2
ハラジュク・ディビジョン代表、Crazy Kirの詠君ですよね!?
ファン1
ファン1
まさかこんなとこで会えるなんて!セン君やアイ君も居るんじゃ……
詠永 零熾
詠永 零熾
今日は一人だけなので、二人は居ませんよ
ファン1
ファン1
そっかぁ〜。あ、私クレキーのファンです!
ファン2
ファン2
あの、もし良ければ、写真とか一緒に……
詠永 零熾
詠永 零熾
写真、ですか?んー
俺が悩んでみせると、ファンの二人は何かを思い出したかのように「ほら、詠君にはアレを!」とか「あ、そうだ」とかコソコソ話し始め、カバンからお菓子を取り出した。
ファン2
ファン2
偶然だけど、買ってて良かったー!詠君、これ、赤レンガ倉庫近くで買ってきたお菓子なんだけど、あげます!だから記念に写真撮って下さい!
詠永 零熾
詠永 零熾
くれるんですか?ありがとうございます。お礼に写真、良いですよ。ただ、SNS上での画像の扱いは気を付けて下さいね?
ファン1
ファン1
は、はい!
ファン2
ファン2
大丈夫です!詠君のSNS嫌いは承知なので、フォルダに留めておきます!
詠永 零熾
詠永 零熾
おや、それは有難い
ファン二人と写真を撮り、手を振って別れる。もらったお菓子は家で食べる事にした。
俺達Crazy Kirのファンは、個人のファンの層や特徴が違っていたり、変わった決まりがあったりする。今みたいに。
詠永 零熾
詠永 零熾
(その中でも、俺のファンはルールは弁えてるけど過激な人が多いみたいだし)
弁えてるけど過激というのは、誰かをアンチするとか、周りに迷惑かけるとかの意味では無い。強いて言うなら、変な人が多い。ストーカーという意味でもないが、良くいえば寛容過ぎて俺のディスりさえもファンサに捉える様な人が多い。
そして、先程の様にプライベートでのファンサに関しては、“食べ物”と交換でお礼として俺がファンサするのが暗黙の了解となっている。また、俺の気分次第でもあるわけだが。
一般的なアイドルなどのファンからすれば、賛否両論の意見が出るかもしれないが、不思議と俺のファンが問題を起こした話は聞いたことが無いし、ファンの中で暗黙の了解となってるせいか、ファン内での揉め事も耳にしたことがない。
詠永 零熾
詠永 零熾
(もらった食べ物は変なものが入ってないか、確認しながら食べてはいるけど……今んとこ何事もない)
ハラジュク・ディビジョンに行くと、ファンの数は一気に増える。
中王区に行く際も、素性を隠しているのでバレないように気を付けている。でも、パトロールしてる際に声を掛けられたりはやはりあるのだ。そして────────
男1
男1
おー。見た事ある顔かと思ったら、ハラジュク・ディビジョンのヨミ様じゃねーか
男2
男2
今日はお供のお二人は連れてないんですかねぇ?ヨミ様〜
こういう呼び止められ方も増えた。
恨みもない、知らない人と喧嘩する主義は無いし、正直普通に絡まれずシカトしたいが、名や顔を知られてる以上、絡まれてしまう。そういう意味では目立つのは好きではない。あくまで、絡まれてしまうから変に目立ちたくないだけで、絡みがなければ良い意味で目立つのは好きでも嫌いでもない。
詠永 零熾
詠永 零熾
(つか、ヨミ“様”って……)
俺はラップバトルはともかく、昼間はいないことが多く、ウランやセンバに任せっきりな所がある。そして、二人とは同級生だが、誕生日的にも年齢的にも自然と俺が一番年下になる。つまり、メンバーの中で末っ子。
また、自分の手はなるべく汚さないやり方を好む故に、こういった輩の一部からは“お坊っちゃん”扱いされてるらしい。悪い意味で。
詠永 零熾
詠永 零熾
(オマケに、さっきのサイコの話もだけど……センバ辺りがお喋りだからあぁ言う風に危ない面だけ並べ立てて、話を大袈裟にするんだよなぁ。あの話は事実だけど、兄妹喧嘩で殴り合う奴なんて俺以外にいるだろうし、幼少期なんて善し悪しが分からないから滑り台の話は尚更だと思うけど……変な噂が流れるんだよな)
少なくとも、左馬刻サマと銃兎さんに対して言った否定の言葉は本当だ。
俺が本当のこと言っても胡散臭いと言われ、信用されないことが大半だが。さっきみたいに。別に悪ぶってるつもりもなければ、口や足癖は悪いかもしれないが、イカれた犯罪者に憧れてる訳でもない。その犯罪心理に興味はあるが。
ただ、今みたいに変な噂が出たり、腹黒いと言われるせいか、危ないヤツ認識を一部でされてるらしい。
男2
男2
おいおい、無視かよ
男1
男1
俺達、ヨミ様のファンだからさー?ちょっと相手してくんない?
詠永 零熾
詠永 零熾
……すみません、僕、早めに帰ってやることがあるので
男1
男1
えーなにやんの?相手した後でも良くない?
男2
男2
なら、俺等が車で送るからさ。それならいいでしょ?
詠永 零熾
詠永 零熾
(距離ちけぇし、この絡み方はうぜぇな……。センバなら、即キレてんぞ)
笑顔で相手をするが、無視して歩こうとすれば前の道を塞ぎ、グイグイ近寄って来るので仕方なく後ろへ下がるしかない。でも通行人の邪魔だし、単純にウザい。
めんどくせぇなーなんて思ってると、胸ぐらを掴まれ、「おーいヨミ様聞こえてんのか?答えろよスカし野郎が」と大声を出すもんだから顔を顰める。
詠永 零熾
詠永 零熾
(耳元で騒ぐなようるさいなぁ。てめぇのマイク口ん中にぶち込んでから喉元に貫通するまで踏み潰してやろうか)
なんて思いながらも、別にキレているわけじゃない。無花果の姐さんからむやみやたらに仕事外でラップバトルを行うなと言われてることもあって、あまり大事にはしたくないが、この状況だと────────
有栖川帝統
有栖川帝統
おい、てめぇら何やってんだ
何故かヨコハマ・ディビジョンに野良猫ダイスがおり、男二人はダイスを見て「シブヤ・ディビジョンの……」と呟いたが、引く気はないようだ。
詠永 零熾
詠永 零熾
おや、のらのらのら野良猫ダイスさんはどうしてここに?
ダイスが来たことで、笑顔のまま冷静になる。相変わらず胸ぐらは掴まれたままだが、そんなの関係なく男二人を無視してダイスと話をする。
有栖川帝統
有栖川帝統
誰がのらのらのら野良猫ダイスだ!理鶯さんとこで飯食いに行ってたんだよ
詠永 零熾
詠永 零熾
(理鶯さんの飯って……あのゲテモノか。左馬刻サマ達とダイスすれ違ったかな?)
有栖川帝統
有栖川帝統
お前こそ、こんなとこで何やってんだ。絡まれてやがるし。何時ものうぜぇ煽りはどうしたよ。さっさとラップバトルで決着つけようぜっ!
ダイスがヒプノシスマイクを起動させ、背後にパチンコ台が現れる。それと同時に音楽が流れ始め、男二人は俺の胸ぐらから手を離す。
有栖川帝統
有栖川帝統
《賭けるならココが山場!待ったナシだ 勝ち目ないぜ雑魚が! 一か八か伸るか反るか 出すこの場にJOKER 今更降参なんてジョークはNo thank you. 後には引けねぇ 上がる俺のボルテージ こいつが決め手 上がれヨミもステージに! 》
そう来たか、なんて苦笑いしながらも渋々俺もマイクを起動する。にしても、一時的にとはいえ、まさか他ディビジョンの奴とラップすることになろうとは。
詠永 零熾
詠永 零熾
《僕は巡見使。帳消しには出来ない君らの暴言、時すでに遅し。安易な行動は程々に。本能に従うだけなら僕のリリックですぐ様翻弄。このマイクでライム踏み 忽ち黙らせるチンパンジー。いや、一般人以下の塵芥? なれないね人才。気安く触る穢れた手に掛けとけ殺菌剤。聞かねぇ奴にバッサリ与えるこの場で罰際》

男1
男1
ぐぁああ!
男2
男2
ぐはぁ!
男が二人倒れたとこで、ダイスが二カッと笑いながら片手を出してきたのでハイタッチをする。その後、俺の気分もそれなりに良くなったのでお礼も兼ねて近くのレストランで飯を奢ることにした。
有栖川帝統
有栖川帝統
んめぇ!いやぁ、サンキューな!たまたま通りすがっただけだけどよ
詠永 零熾
詠永 零熾
今日はよく呼び止められる一日だったなぁ
有栖川帝統
有栖川帝統
なんのことか知らねぇけど、それよりも……お前のリリックって生で聞くのは初めてだったけど、なんか……最初は落ち着いてんのに段々暴言的になるんだな。もうちょい控えめかと思ってたわ
詠永 零熾
詠永 零熾
それが僕の売りですから
有栖川帝統
有栖川帝統
でもなんで俺が来るまでマイク起動しなかったんだ?お前、あーゆー輩を相手にとっちめる仕事してんだろ?
詠永 零熾
詠永 零熾
仕事以外で余計な面倒事は起こしたくないんですよ。と言っても、今回は僕も流石にちょっとイラッとしたので助かりました。あと一歩ダイスが来るの遅かったら、マイクを武器にこめかみ目掛けてぶん殴るとこでした
有栖川帝統
有栖川帝統
おい。そこはせめてマイクを武器にラップバトルだろ。下手したら死ぬぞ。アイツら
詠永 零熾
詠永 零熾
嘘です。そんなことしませんよ。いや、正直物理的にとっちめたい気持ちはありましたが、そういう意味での衝動的な感情はめったやたら表にだすものではありませんよ。僕は“言葉”を重要視しているので
有栖川帝統
有栖川帝統
そーゆーもんかぁ?つーか、お前と話してると幻太郎思い出すわ
詠永 零熾
詠永 零熾
おやぁ?ダイス、奇遇ですね。小生も貴方と話しているとうちの野良猫を思い出します〜
有栖川帝統
有栖川帝統
おい。幻太郎のモノマネやめろ。地味に似てるから。話し方とか声の雰囲気とか。てか、うちの野良猫ってもしやセンのこと言ってんのか?
詠永 零熾
詠永 零熾
ダイス正解ー!センもね、僕が貸したお金返してくれないんだよー?僕泣いちゃう〜
有栖川帝統
有栖川帝統
それは、まさか乱数のモノマネか?
詠永 零熾
詠永 零熾
分かります?
有栖川帝統
有栖川帝統
分かる。お前良く出来んな……。センの奴もお前に借金してんのか?
詠永 零熾
詠永 零熾
あぁ、それは嘘です。正しく言うなら、僕ではなくてアイに借金してます。僕、人とお金のやり取りはあまりしたくないので。返さない相手には尚更
有栖川帝統
有栖川帝統
ぐっ……言葉のブーメランが……!
詠永 零熾
詠永 零熾
あぁ……俺もよくあります。一二三の奴に振り回されたりする際に、アイツの何気ない言葉が……
有栖川帝統
有栖川帝統
こ、今度はシンジュク・ディビジョンのリーマンか!
詠永 零熾
詠永 零熾
せーかい!今度俺っちのお店に来てよー!それと、俺っちのことは気軽にひふみんって呼んでいーかんね!
有栖川帝統
有栖川帝統
次はシンジュク・ディビジョンのホストか……
詠永 零熾
詠永 零熾
全く、二郎の馬鹿が騒ぐもんだから、余計な手間が増えたじゃないか
有栖川帝統
有栖川帝統
あんま詳しくねーけど、イケブクロ・ディビジョン、Buster Bros!!!の三男坊かって、お前どんだけやるつもりだ
詠永 零熾
詠永 零熾
僕のモノマネが何処まで通用するかと思って。声は割と中性的で低めだからね。完璧な声帯模写は出来ないけど、ある程度なら寄せられる。うちのメンバーで皆のモノマネしたりするし
有栖川帝統
有栖川帝統
暇人かお前ら。俺が言えねぇけど。でも特徴は捉えてたな。わかり易かった
パスタを食べ終わってダイスがフォークを置いた時、「お味はどうでありんしたか?」と女声を出してみる。声が低めな俺からしたら、女声は裏声なんだがな。
有栖川帝統
有栖川帝統
お前のそーゆーとこも幻太郎そっくりだわ。お前等二人で何役出来るよ
詠永 零熾
詠永 零熾
今度試してみたいですなぁ。では、そろそろ参りまひょうかえ
有栖川帝統
有栖川帝統
老人まで……まぁ、いい。ごちそーさん!俺はシブヤ・ディビジョンに帰るから、お前も気をつけて帰れよ
会計を済ませたあと、ダイスと別れて家に帰る。今日一日の後半だけで色々あった気がする。でもま、それも悪くない。
詠永 零熾
詠永 零熾
さて、作家作業しますか

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