飛行術の授業が終わり、昼休み。
だが俺は食堂には行かず、元の世界で買ったパンと飲み物を出して教室で一人で食べる。
にしても、一人で居るだけで何故世間はマイナスに捉えるのか。一人で居るだけで、勝手な憶測やらこじつけやらでいつの間にかマイナスなレッテルを貼られる。
しかも、落ち着いた服装に冷静且つ大人しい振る舞いをしただけで直ぐ陰キャ扱いだ。解せぬ。昨日会いに来たハートマークの後輩ちゃん、俺の事“地味”とか思ってるんだろうな。
例えばセンバなら、アイツは上辺だけの浅い関係や、ちょっと話しただけの人を直ぐに“友達”や“知り合い”と呼ぶ。全員とは言わないが、友人が多い人の特徴としては広く浅い関係……そして、広く浅い関係が故に人間関係の拗れが割と多い気がする。実際にセンバなんてうちのメンバーの中では一番人間関係のトラブルが多い上に、センバ自身が愚痴ったり、悩んだりしてることもある。その度俺やウランは矛盾するセンバの偏見的な意見などを聞かされる羽目になるのだが……幾ら人間関係を断ち切っても、再び同じことを繰り返すのだ。これが。その度に似たような問題でまた似たような話を聞かせられる。そんなに人間関係で悩み、グダグダ言うのなら、最初から全て見直して上辺だけの友人を自分から減らせばいいのでは。と毎回思っているが、口では“利用価値がある”、“人脈が広い方がいいでしょ”なんて強気に言っておきながら結局は人数で張り合ってたり、見栄を張ってるだけの輩が多い気もする。数が多いだけが、上手な付き合い方では無いだろう。むしろ、人数が多い分裏切りは発生しやすい。
───────と、こんなことを口にすれば直ぐに皮肉やら嫉妬やら言われるが……俺自身、自分が認める“友達”は少ないが、まぁそれなりに話してる人は割と居る。俺の中でそういった人は友達ではなく、ただの知人。そこで自分に悪影響のある者がいれば、友達では無い分深い関係性もないので直ぐに切り捨てられるだろう。
言うならば、クラスメイトのラギー君と似たような関係性だ。それらさえも友達と呼ぶなら、俺の御友人様はそれなりに増えるだろうよ。また、知り合いの基準も挨拶程度しかかわさないのなら、それは知り合いではなく、単なる顔見知りに過ぎない。
この二人はクラスの中でも親しげに話しかけてくる。一見したら友達なのかもしれないけど、俺の中ではクラスメイトと友人の狭間。話してて面白かったり、授業で組んだりすることはあるが、完全に友達と呼べる程までまだ距離はあると思う。
つまり、ぼっちでは無いのだがぼっちなのではないだろうか。部活にも入っていないので、他学年や他クラスとの関わりが少なければ親しい後輩もいないし、親しい先輩もいない。退屈だ。
だからといって面倒事にはなるべく関わりたくない。ただでさえ元の世界でやんちゃ共の相手をしてるのだから、せめて学校ではストレスなく平穏な生活を送りたい。
そんなことを考えていると、「あの、レイシ先輩」と誰かに名前を呼ばれる。
噂の監督生ユウ君とモンスターと、えーっと……名前忘れたが、何時も一緒にいるらしい仲良し二人組が教室に入って来る。
それだけの為にわざわざ親しくもない先輩に会いに来るとは、流石はこの学校の生徒。人見知りをしないどころか、初対面からグイグイ来る輩が多いのは知っていたが……後輩も負けず劣らずだな。別に嫌味を言っているわけでも嫌な訳でもない。
ただ、自分のいる世界では、親しくもなければ話を聞きたいからと先輩へ頼みに会いに来たりはしないだろう。多分。
ほとんど忘れかけてるが、出来るだけ一昨年の出来事を思い出して、ユウ君達に話をすることにした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。