第23話

第三章 四話 闇の鏡 アズール視点
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2021/01/23 10:23
レイシさんが寮を出た直後、カリムさんは後輩組に魔法の絨毯を見せ、立ち上がったフロイドが床を見て光る小さな物を拾う。
フロイド・リーチ
フロイド・リーチ
なにこれ、指輪?
アズール・アーシェングロット
アズール・アーシェングロット
誰の指輪でしょうか
ジェイド・リーチ
ジェイド・リーチ
カリムさん、のにしては安物に見えますね
カリム・アルアジーム
カリム・アルアジーム
ん?呼んだか?
ユウさん達と絨毯の話をしていたカリムさんが僕達の方を見る。一応「この指輪、カリムさんのですか?」と尋ねるが「俺のじゃないなー」とカリムさんは首を横に振った。
指輪はシルバーで、センターにチェーンと羽根の装飾が施されている。しかし、今日こんな指輪を付けていた人はいなかった筈だ。
ジャミル・バイパー
ジャミル・バイパー
どうしたんだ?それは……指輪か?
アズール・アーシェングロット
アズール・アーシェングロット
床に落ちていましたが、誰のものか心当たりはありますか?
ジャミル・バイパー
ジャミル・バイパー
……この指輪、レイシのだな。この世界に来たばかりの頃、似たようなのをはめていた気がする。今ははめていないみたいだが
ユウ(監督生)
ユウ(監督生)
レイシ先輩の落し物ですか?
フロイド・リーチ
フロイド・リーチ
出てったばっかだし、追いかければ間に合うんじゃない?
アズール・アーシェングロット
アズール・アーシェングロット
それもそうですね。念の為、先に電話して呼び止めておきましょうか
レイシさんに電話をしてみるが出ない。もう一度掛けてみるが……やはり出ない。
ジェイド・リーチ
ジェイド・リーチ
出ませんね
ユウ(監督生)
ユウ(監督生)
あ、レイシ先輩って、基本的学校内ではマナーモードにしてるらしいですよ。昼間話してた時に言ってました。多分、鏡の間に向かってるんじゃないんですかね?闇の鏡から元の世界に帰ってるみたいだし……
アズール・アーシェングロット
アズール・アーシェングロット
なるほど。なら、直接届けに行くしかなさそうですね。もう帰ってしまっていたなら明後日渡せばいいですし
ジェイド・リーチ
ジェイド・リーチ
暇ですし僕もついて行きます
フロイド・リーチ
フロイド・リーチ
ジェイドも行くのー?動きたいし俺も行くー
カリム・アルアジーム
カリム・アルアジーム
おう。レイシまだ居たら良いな!
結局三人で行くことになり、小走りで鏡の間へと向かう。ユウさん達に押し付けても良かったが、場合によってはレイシさんが元の世界へ帰る瞬間を目撃出来るかもしれない。
むしろ、それが今回の狙いの一つだったりする。レイシさんは授業が終わった後、帰るのが早い上に僕達はモストロ・ラウンジの方で多忙だったり、彼を探るにしても都合が合わなかった。
おまけに、鏡の間は学園長の許可がなければ基本的には入れない場所。だが、今なら合法的に入れるだろう。
アズール・アーシェングロット
アズール・アーシェングロット
(ですがそう考えると、レイシさんは何時もどのようにして鏡の間の開け閉めをしているのでしょう。学園長は現在留守の様ですし……)
鏡の間の近くまで行き、扉を開けようとするが、中から誰かの話し声が聞こえてドアノブに伸ばした手を止めた。
ジェイド・リーチ
ジェイド・リーチ
レイシさんの他に誰かいるのでしょうか?
……これは、“闇の鏡”の声ですかね
扉に近付いて耳を澄ませる。ジェイドの言った通り、闇の鏡の声が薄ら聞こえた。
フロイド・リーチ
フロイド・リーチ
エイちゃんも何か言ってんねー。えと……“ヒプノ───────”
フロイドが言葉を言いかけた時、廊下の奥から数人の叫び声が聞こえた。目を向けると、ユウさんやエースさん達が魔法の絨毯に乗ってこちらに飛んでくる。その下ではカリムさんとジャミルさんが暴走する絨毯を追いかけていた。
デュース・スペード
デュース・スペード
グリム、お前また変なことでもしたか!?
グリム
グリム
オレ様は知らないんだゾ!
エース・トラッポラ
エース・トラッポラ
うわぁぁあ!?ぶ、ぶつかるー!
ユウ(監督生)
ユウ(監督生)
だ、誰か止めてくださーい!
アズール・アーシェングロット
アズール・アーシェングロット
流石にあのスピードで来られたら……!
ジェイド・リーチ
ジェイド・リーチ
取り敢えず中に入りましょう
鏡の間には鍵が掛けられてあったが、フロイドが扉を蹴飛ばし、扉を開けて入ると、闇の鏡の中へ入っていったレイシさんの片足が見えた。あの鏡、中に入れるもんなのか。
フロイド・リーチ
フロイド・リーチ
小エビちゃん達なにしてんの……?
暴走した絨毯が廊下を真っ直ぐ行ったかと思えば、絨毯を追いかけていたジャミルさんとカリムさんもが焦りながら鏡の間へと入ってくる。どうやら今度は絨毯がUターンして飛んできているらしい。
ジャミル・バイパー
ジャミル・バイパー
本当に何したんだ彼等は……。これじゃあ止めようにも止められないぞ
カリム・アルアジーム
カリム・アルアジーム
目を離したらいきなり暴走しだしたんだ。参った参った
絨毯が過ぎ去ったかと思ってカリムさんが廊下をこっそり確認するが、「うわああ!」と再び戻ってきた。一方通行で飛んでいた筈の絨毯が鏡の間へと入って来たのだ。
エース・トラッポラ
エース・トラッポラ
グリム、お前端っこ引っ張ったろ!
グリム
グリム
落ちそうだったから仕方なかったんだゾ!
ユウ(監督生)
ユウ(監督生)
先輩達避けて下さーい!!
またもや絨毯がこちらへ向かって来るが、フロイドが何か思いついた様な顔をして僕の腕を掴んだ。フロイドが走った先には闇の鏡があり、フロイドが「えーと、なんつってたっけな。確か、“ヒプノシスマイク”って言ってた!」と独り言を言い始めた。
アズール・アーシェングロット
アズール・アーシェングロット
こんな時に何を言ってるんですか
フロイド・リーチ
フロイド・リーチ
さっきエイちゃんが言ってた言葉。聞こえたんだよねー
“ヒプノシスマイク”という言葉を聞いた闇の鏡が突然光りだし、僕達は目を見開いたが今更足を止める訳にも行かず、そのまま鏡の中へと入って行った────────。

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