第12話

第一章 九話 お誘い
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2020/12/27 05:48
ユウ君達と話をしていると、教室にオクタヴィネルの三人と、何故かジャミル君、カリム君の計五人が入ってくる。後半の二人とはクラスは違うが、カリム君とはちょくちょく話をするし、カリム君がジャミル君の話をしたりするので名前を覚えてしまった。
それはともかく、オクタヴィネルの三人が居る時点で嫌な予感がする。
グリム
グリム
ぬあっ!?な、なんでオマエ等がここに……!?
エース・トラッポラ
エース・トラッポラ
ジャミル先輩にカリム先輩まで……どうかしたんすか?
デュース・スペード
デュース・スペード
ユウ、まさかまた何か面倒事に……?
ユウ(監督生)
ユウ(監督生)
いや、心当たりないよ!今回は!
黙ってユウ君達のやり取りを見ていると、オクタヴィネルの眼鏡君がニコッと笑う。
アズール・アーシェングロット
アズール・アーシェングロット
実は、廊下でカリムさん達とお話をしていましてね。次の休日に、スカラビア寮で一緒に食事会をしようと言う話になりまして……もし宜しければ、ユウさん達も如何です?それと……レイシさんも。人数は多い方が賑やかでいいでしょう?以前スカラビア寮にお邪魔した際は予想外の問題が起きてしまいましたからね。改めて親睦を深めようではありませんか
エース・トラッポラ
エース・トラッポラ
あー……えっと、俺は次の休みは用事が……
フロイド・リーチ
フロイド・リーチ
へぇ?何の用事ー?
アズール・アーシェングロット
アズール・アーシェングロット
都合が合わないのであれば、別の日に繰り越しますが
エース・トラッポラ
エース・トラッポラ
うぐっ……
デュース・スペード
デュース・スペード
で、でも、人数が多い方がいいとは言え……こんなに一度に行ったらバイパー先輩が大変では?準備とか、料理とか……いつもバイパー先輩が行っていると聞いていますし
ジェイド・リーチ
ジェイド・リーチ
それならご心配なく。僕達がジャミルさんをお手伝いしますので
デュース・スペード
デュース・スペード
そ、そうですか……
見事に逃げ場を防がれ、後輩二人はたじろぐ。ユウ君に関しては用事も部活もないので断りようがない。見ての通り、学生同士の親睦会というより緊張感漂う強制的な食事会となりそうだ。しかし、次の休みの日は日中に用事はないが夕方頃になればウラン達とパトロールの仕事が入っている。
というか……
詠永 零熾
詠永 零熾
何故僕も?
アズール・アーシェングロット
アズール・アーシェングロット
あぁ、それは……っと。その前に、こうやってきちんとお話するのは初めてですね。僕はアズール・アーシェングロット。貴方の事はジェイドから伺っていますよ。ユウさんと同じように魔力の無い人間で、しかも、一昨年噂になって居た方が貴方だったとは。それで是非お話したいと思いましてね。それに、カリムさんも今までに何度か貴方をスカラビア寮に誘っているらしいですが、未だに断られ続けていると仰っていたので。これは良い機会かと食事会を提案したんですよ
詠永 零熾
詠永 零熾
(そういやぁあったなそんなこと。仕事で忙しいから断ってたけど)
詠永 零熾
詠永 零熾
……夕方頃には用事があるので、昼間なら
アズール・アーシェングロット
アズール・アーシェングロット
分かりました。では、昼間頃に開始ということで。因みに……貴方も異世界から来たと耳にしていますが、今はどちらにお住いに?オンボロ寮に寝泊まりしているわけでもなさそうですし
詠永 零熾
詠永 零熾
元居た世界から行き来してますよ
正直に答えると、意外にもあっさりしていたせいかユウ君達以外のジャミル君達が目を見開く。
ジェイド・リーチ
ジェイド・リーチ
異世界とツイステッドワンダーランドを行き来?そんなことが可能なんですか
詠永 零熾
詠永 零熾
なんでそんなことが出来るのかって言う原理は僕も分かりませんけどね。ただ……一応言っておくとユウ君が居た世界とは恐らく違いますので
フロイド・リーチ
フロイド・リーチ
じゃあ小エビちゃんは元の世界には帰れないってことかー
カリム・アルアジーム
カリム・アルアジーム
でもなんか面白いな!俺達の知らない世界がまだ他にもあるんだろ?レイシは羨ましいなー。自分の居た世界とは違う世界を知れて!
ジャミル・バイパー
ジャミル・バイパー
カリム……お前は相変わらずだな。まぁ、分からなくはないが。別の世界に行けたなら、お前のお守りをしなくて済みそうだしな
カリム・アルアジーム
カリム・アルアジーム
そしたら、従者とか関係なくジャミルと改めて対等な友達になれるな!今もそのつもりだけど
ジャミル・バイパー
ジャミル・バイパー
……っ。お前は本当に……良くもまぁそんなこと平然と言えるな
和やかな雰囲気を壊すように眼鏡君が咳払いをする。知らない世界を知れる。それは一理あるかもしれない。この世界での常識と元居た世界での常識もちがければ、魔法があったり、ラップでバトったりしてる二つの世界があるのだ。面白いっちゃあ面白い。
アズール・アーシェングロット
アズール・アーシェングロット
二つの世界を行き来……ということは、異世界に行ける……?ふむ。なるほど。確かにそれは面白いですね。所で、レイシさんはSNSを使っていたりはしますか?出来れば連絡先を教えて欲しいのですが。そもそも、こちらの世界で貴方のスマホは使えるのでしょうか?
詠永 零熾
詠永 零熾
使えなくはないけど……この世界で言うマジカメみたいなのはやってませんから、電話番号だけで良いですか?僕、SNSってあんまし好きじゃないんで
とは言いつつ、L○NEはやっているけどこの世界に同じアプリはなければ、この世界にあるL○NEと似たようなアプリをダウンロードは出来ない。元居た世界使用のスマホなので。
アズール・アーシェングロット
アズール・アーシェングロット
それなら仕方ありませんね。電話番号だけで構いませんよ。電話番号からメールも出来ますし
ユウ(監督生)
ユウ(監督生)
あ、それなら僕も教えて貰っても良いですか?迷惑でなければですけど
グリム
グリム
異世界から来たもの同士で話でもすんのかー?
カリム・アルアジーム
カリム・アルアジーム
お!なら俺も!これを機にレイシともっと色んな話もしたいしな!
ジャミル・バイパー
ジャミル・バイパー
おい、また勝手に……!
この学校で連絡先を交換した奴なんていなかったので、三人とはいえ一気に増えるなぁ……なんて思いながらも「別に良いですよ」と承諾する。
アズール・アーシェングロット
アズール・アーシェングロット
では、追加情報や変更点等があれば連絡しますので。あぁ……あと、話が逸れますが、レイシさんモストロ・ラウンジにお越しになったことは一度もないでしょう?もしよろしければ、是非いらして下さいね。ポイントを貯めれば、悩み事があった際、話を聞いた上で貴方の力になりますよ。お待ちしております
今言われたように、モストロ・ラウンジには一度も行ったことは無いがそんなことまで把握しているのかと面食らった。細かいな。いや、ここは普通恐ろしいというべきなのだろうか?どうでもいいが。
モストロ・ラウンジは気にはなっていたが、高校生が経営しているカフェにしてはオシャレだし、この三人組が居るのもあってか少し入りづらかったのだ。
詠永 零熾
詠永 零熾
あー、気が向いたら行きます。あと、時間と金に余裕があったら
フロイド・リーチ
フロイド・リーチ
エイちゃん、そんなに時間とお金ないの?ラッコちゃんの誘いも今まで断ってたみたいだし
詠永 零熾
詠永 零熾
ラッコ……?エイって、僕の事ですか?
フロイド・リーチ
フロイド・リーチ
そ。色合いも雰囲気もなんか似てるしねー。ラッコちゃんはこいつ〜
カリム・アルアジーム
カリム・アルアジーム
よくわかんねーけど、俺ラッコって呼ばれてんだ。面白いよな!
詠永 零熾
詠永 零熾
面白いかどうかは知らんけど、うちの友人にはウーパールーパーとミジンコプランクトンがいますよ
エース・トラッポラ
エース・トラッポラ
は?み、ミジンコ……プランクトン?
デュース・スペード
デュース・スペード
友人にウーパールーパーって……どういう……?
詠永 零熾
詠永 零熾
今呼ばれたのと同じ。ただのあだ名。ウーパールーパーは僕がつけましたが、ミジンコプランクトンって奴は自分から名乗り始めました
ウーパールーパーはセンバ。ミジンコプランクトンはウランのことだ。ウランは科学や海洋生物が好きで、一番初めは自分のことをクラゲと言っていた。俺としては、タツノオトシゴでもアリかと思うが。
ジャミル・バイパー
ジャミル・バイパー
レイシ……お前もそんなあだ名付けたりするんだな。というか、ミジンコプランクトンを自称する友人て……
詠永 零熾
詠永 零熾
元居た世界の友人ですよ。どちらも。自称してる方は微生物や海洋生物が好きでしてね。もう一人の方は料理が好きで、食材にはそれなりに詳しい奴ですよ。二人ともちょっと変わってますが
ジェイド・リーチ
ジェイド・リーチ
ほう?中々愉快そうな御友人ですね
詠永 零熾
詠永 零熾
元の世界ではその二人と(野郎共の)お掃除ボランティアをしてるんですよ。だからその準備やらなにやらで忙しいんです
デュース・スペード
デュース・スペード
お掃除ボランティアなんてしてたんですね
詠永 零熾
詠永 零熾
丁度、次の休みは二人が日中に用事があるみたいなので夕方頃にでも集まって活動しようという話になりましてね(嘘)
エース・トラッポラ
エース・トラッポラ
お掃除ボランティアとか、俺ならやる気すら起きないっすけど……すげぇ
なんて話をしていると、ユウ君が「あ、そろそろ戻らないと」と、時計を見て小さく零す。すると、オクタヴィネルの三人とジャミル君達も「では、また」と言って教室から出ていく。
詠永 零熾
詠永 零熾
(……なーんか、賑やかになってきたなー)

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