ユウ君達が帰ったあと、俺達はハラジュク・ディビジョンへと向かい、喧嘩してる輩をとっちめたり、他に問題がないかを監視した。
左馬刻サマ達の方はどうやら売人を捕まえたらしく、知らせのメールが届いた。今日は絡まれたり、秘密を暴露したりもして長い一日だったが、悪くない一日でもあった。
そして翌日────────
約束の時間に俺が鏡の間の鍵を内側から開けることになっている。俺はスペアキーを持っているので、普通に開けられるのだ。
今思えば昨日、鏡の間の扉の鍵を閉めた筈なのに、彼等どうやって開けたのだろう。魔法か、蹴飛ばしてあけたのだろうか。まぁいい。
スペアキーを彼等に渡さなかったのは、初めてナイトレイブンカレッジに来た際、学園長から鍵を預かった時に「誰にも渡してはいけない」と言う約束をしたから。
また、鏡の間に入る前には学園長からの許可も得てくるようにと一応釘をさしておいた。
アズール君やユウ君からのメールで「許可を頂きました」「今から鏡の間の前に向かいます」と来ていたので、俺も私服に着替えて鏡の間へと向かった。
あっという間に鏡の間に行き、早速鍵を開けた。すると、私服姿の皆がタイミング良くやって来た。
ケーキが入った箱を受け取ると、ジェイド君が前に出て「僕達からもありますよ。どうぞ」とオシャレな紙袋を渡される。中はお菓子の詰め合わせらしい。
まさかオクタヴィネルの三人からも、物を貰えるとは思っていなかったので一瞬戸惑ったが、お礼を言って受け取った。
自分で誘っておいでなんだが、エース君の言いたいことも分からなくはない。
この学校で一番最初に自分の居た世界をまわるのがこのメンバーとは……。
面子が面子なだけに、心配な部分は少なからずあるが、同時にピクニックみたいでちょっと楽しみでもある。俺ピクニックしたことないし、そんな好きじゃないけど。
この情報は昨日の別れ際にジャミル君が彼等と行動する時の注意事項として教えてくれた。前々からちらほらと噂は耳にしていたので、知ってはいたけれどわざわざ教えてくれるなんて親切だ。本人にそのつもりは無いのだろうが。
闇の鏡の前に立ち、合言葉を言って自分の部屋へと戻る。“靴を脱ぐように”と昨日教えたことを思い出したのか、全員が靴を脱ぎ始め、事前にカーペットの前に並べていたスリッパを履くように伝える。皆が玄関の方に一旦靴を置いている間、頂いたケーキとお菓子を冷蔵庫に入れた。すると、戻ってきたユウ君が「レイシ先輩の部屋って、絵の具に、楽器やら本やらが沢山置いてありますけど多趣味なんですか?」と聞いてくる。
アズール君の目線の先にはフロイド君が居た。フロイド君は「え〜。だって飽きちゃうんだからしょうがねぇじゃん」と拗ねたように言う。その様子を見たジェイド君は「おやおや、困りましたね」と微笑むが、絶対困ってない。
他にも、一日の計画を立てようが結局気分によって殆どの予定が変わってしまうので、俺が計画通りに行動するのは難しく、そして稀だ。どちらかと言えば、ウランの方が得意だろう。センバに関してはそもそも計画立ててるのかすら分からない。シブヤに居るその場凌ぎのギャンブラーとほぼ同じだと考えてもいいだろう。
話しながら僕の“書斎”に向かうと、デュース君が「相変わらず凄い量の本ですね」と呟く。
話をしていると、センバから「もうすぐ着く」というメールが送られてきたので、「センバがもうすぐ着くそうなので、そろそろ下に降りましょう」と声を掛けて下に降りた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。