第27話

第三章 八話 車内で
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2021/01/23 09:07
左馬刻サマ達の元へ向かう用事もあるので、車を走らせながら車内で話し合うことになった。いつもなら俺が助手席なのだが、今回だけは学生同士近い方がいいだろうということで、ウランが助手席に座り、その後ろに俺が座る事になった。
空も暗くなり、ビルの明かりで美しい夜景が車窓から見える。カリム君は「綺麗だなー!」と目を輝かせていた。
アズール・アーシェングロット
アズール・アーシェングロット
あぁ、そうだ。これ、スカラビア寮での落し物ですよ
詠永 零熾
詠永 零熾
僕の指輪ですね。拾ってくれて有難うございます
グリム
グリム
それで、さっきのなんだったんだ?マイクとかラップバトルとか……周りの風景は変わるし、スピーカーみたいなのが出たあとにいきなり音楽流れて、お前らが歌ってた時は船とか波とか、浮き輪が突然目の前に現れて男共に攻撃出来たんだゾ
エース・トラッポラ
エース・トラッポラ
ヨミ先輩達、マジ何者……?
ユウ(監督生)
ユウ(監督生)
ヨミ先輩が言っていたように、僕の知ってる日本とはなんだか違うみたいですし
詠永 零熾
詠永 零熾
聞きたいことが山ほどあるのは分かりました。僕が答えられる範囲でならお答えしますよ
盧守 海藍(ウラン)
盧守 海藍(ウラン)
ヨミが先輩やってるー!ちゃんと教えてあげなよ〜
詠永 零熾
詠永 零熾
ミジンコチビ馬はお黙りなさい
盧守 海藍(ウラン)
盧守 海藍(ウラン)
僕はミジンコだけどチビじゃねー!
十字風 染覇(センバ)
十字風 染覇(センバ)
いや、誰がどう見てもチビだろ。むしろ、ミジンコじゃなくてチビだーが正解じゃね?
盧守 海藍(ウラン)
盧守 海藍(ウラン)
その返答を僕が自分でするのもどうかと思うけどね
二人を無視してユウ君達にまず、この世界の“システム”について簡単に説明する。
“ヒプノシスマイク”がなにか。この世界で言う“ラップバトル”とはどういうものか。この国の状況など。
ジェイド・リーチ
ジェイド・リーチ
……そういうことでしたか。変わった国ですね。でも面白いです
フロイド・リーチ
フロイド・リーチ
へぇー。歌声で喧嘩するってなんかめんどそーだけどそれはそれで楽しそー
アズール・アーシェングロット
アズール・アーシェングロット
周りから見れば喧嘩が一種のエンターテインメントにもなると……。人が集まれば商売が出来そうですね
ユウ(監督生)
ユウ(監督生)
あはは……。でも、さっきのが全部即興なんですね。凄いなぁ
デュース・スペード
デュース・スペード
よくあんなにサラッと歌えますよね……。しかもただ歌うんじゃなくて、韻を踏みながら意味の通った言葉で相手を負かせないといけないわけだし
ジャミル・バイパー
ジャミル・バイパー
だが、話を聞いていると……マイクが無い者やラップが出来ない人の負けが必然的に決まらないか?マイクは最初の頃と違って今じゃ中王区って場所に居る人間に申請し、許可を頂かないといけないんだろう?
詠永 零熾
詠永 零熾
はい。基本的にはそうですが、所有者不明だったり、改造された“違法マイク”と呼ばれるものも出回ったりしていますので……ジャミル君の言った通りマイクのない人やラップが出来ない人は不利になりやすいでしょう。だからこそ、僕達の存在があるんですけどね。違法マイクを使う連中や、ヒプノシスマイクで犯罪、無差別な喧嘩等を起こす連中をとっちめてお掃除するのが僕達の仕事です。
マイクはマイクでも、使い方やモノによっては脳に強烈な精神的ダメージを与えたり、物理的なダメージを与えることも可能ですから人を死に至らしめる場合があります
グリム
グリム
そんな恐ろしーマイク、よく作れたんだゾ
十字風 染覇(センバ)
十字風 染覇(センバ)
そうそう。中には、相手を昏睡状態にさせたりも出来て、洗脳も出来るけど逆に使い手が死ぬマイクだってあるし
運転しながらセンバが言うと、先程までの明るい声とは打って変わって、ウランが「おい」と止めるように低い声をだす。むしろこっちが本来のウランだ。
アズール・アーシェングロット
アズール・アーシェングロット
先程仰っていた中王区という場所……そこは完全な女性社会で、許可された男性しか入れないと言っていましたが……“女性”である貴方々も、その場所と何か関係が?
アズール君が笑顔で聞いてくるが、特に驚いたりはしない。俺の部屋に入ったのなら、俺が女性であることも、一緒にいるセンバ達が同性であることもバレるのは仕方ないだろう。なんなら、俺よりセンバ達の方が見た目的にもまだ分かりやすいし尚更だ。
それでも世間的に俺達の性別が知られないのは、俺達ハラジュク・ディビジョンは“Xジェンダー”と宣言しているから。その方が多少女っぽくても分かりづらいだろう。まぁ、表向きそう言っているだけで、ウランとセンバは本当にそういう訳では無い。俺自身は本当だけど。
詠永 零熾
詠永 零熾
んー……僕、どこまでなら言っていいんですかね?これ
十字風 染覇(センバ)
十字風 染覇(センバ)
もー全部言っちゃえば?
盧守 海藍(ウラン)
盧守 海藍(ウラン)
はぁ?それで情報がもれたらどうするんだよ
十字風 染覇(センバ)
十字風 染覇(センバ)
だって、彼等こっちの人間じゃないでしょ?知った所でねぇ?
盧守 海藍(ウラン)
盧守 海藍(ウラン)
もー、本当馬鹿〜
アズール・アーシェングロット
アズール・アーシェングロット
言いづらいのであれば、僕個人に教えてくださっても構いませんよ?
僕は口は固いですが、この場にはそうでない方もいるみたいですしね
グリム
グリム
な、なんでオレ様の方を見るんだゾ
エース・トラッポラ
エース・トラッポラ
お前、うっかりいいそうだし
ジャミル・バイパー
ジャミル・バイパー
カリム含め、この場にいる数人は確かに口を滑らせそうだな
カリム・アルアジーム
カリム・アルアジーム
俺も含まれてんのか!
詠永 零熾
詠永 零熾
ぶっちゃけ、“この世界”でバラさなければいいんです。ツイステッドワンダーランドで僕が何者なのか知られても、世界が違うので特に意味ないですし。なので、こっちに居る間だけ気を付けてくれれば結構ですよ
そんな流れで、俺は自分達が中王区の人間であり、何故本名を名乗っては行けないのか、どうしてこっちの世界でも男性のフリをしているのか、秘密対策部の一貫でこの仕事をしている話も打ち明けた。
カリム・アルアジーム
カリム・アルアジーム
レイ……じゃなくて、ヨミ達って凄い奴らだったんだな!政府の役人で表向き秘密警察って……なんかカッコイイな!
詠永 零熾
詠永 零熾
そう言ってもらえるのは嬉しいんですけど……これ、貴方々が思ってる以上に大事な国家の機密事項の一つですからね?うっかり口にしようもんなら僕のヒプノシスマイクで海の藻屑にしますよ。むしろ口ん中に詰める
デュース・スペード
デュース・スペード
じょ、冗談、ですよね?
詠永 零熾
詠永 零熾
さて、どうでしょう
十字風 染覇(センバ)
十字風 染覇(センバ)
気ぃつけなー。こいつ“悪魔”だからさ
エース・トラッポラ
エース・トラッポラ
え"
詠永 零熾
詠永 零熾
貴方に関しては重りつけて放り投げたいですね
盧守 海藍(ウラン)
盧守 海藍(ウラン)
海に?
詠永 零熾
詠永 零熾
空から海に
盧守 海藍(ウラン)
盧守 海藍(ウラン)
普通に海に投げられるより嫌なやつだ。やるなら僕も誘って〜。いい感じの重り探すからさ
詠永 零熾
詠永 零熾
いいですよ〜。ヘリの用意もしないと行けませんねー。楽しくなりそうです〜
盧守 海藍(ウラン)
盧守 海藍(ウラン)
んね〜。センはそれまで逃げないで待っててねー
十字風 染覇(センバ)
十字風 染覇(センバ)
嫌だわ!逃げるわ!つか、なんで俺だけ!?三人メンバー中二人に狙われるって嫌すぎだろ!
詠永 零熾
詠永 零熾
文句言ってないで運転に集中なさい。この車には今十“三”人分の心臓が座席してるも同然なんですよ?事故ったらどうするんですか芋野郎
十字風 染覇(センバ)
十字風 染覇(センバ)
待って。俺はどこから突っ込めばいい?最後地味に暴言だしな
盧守 海藍(ウラン)
盧守 海藍(ウラン)
心臓が座席ってwwwwwww
人数一人多いしwwwwwwwww
詠永 零熾
詠永 零熾
何言ってるんです。センといつも一緒に居る透明な方がいるから十三人であってますよ
十字風 染覇(センバ)
十字風 染覇(センバ)
ねぇ待ってやめて?シャレにならん
ジェイド・リーチ
ジェイド・リーチ
ヨミさん、思っていた以上に愉快な方でしたね
フロイド・リーチ
フロイド・リーチ
てか、今の方が学校に居る時より生き生きしてね?
アズール・アーシェングロット
アズール・アーシェングロット
やはり、一緒についてきて良かったですね。彼……いや、彼女が本当に女性である確認も出来た上に、情報も手に入れましたし。“仏”とはよく言ったものですよ
車内はどんどん賑やかになっていき、センバやウラン、ユウ君達もが普通に雑談をするようになった。そんなことをしているうちに、左馬刻サマ達がいる事務所へ辿り着く──────────。

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