左馬刻サマ達の元へ向かう用事もあるので、車を走らせながら車内で話し合うことになった。いつもなら俺が助手席なのだが、今回だけは学生同士近い方がいいだろうということで、ウランが助手席に座り、その後ろに俺が座る事になった。
空も暗くなり、ビルの明かりで美しい夜景が車窓から見える。カリム君は「綺麗だなー!」と目を輝かせていた。
二人を無視してユウ君達にまず、この世界の“システム”について簡単に説明する。
“ヒプノシスマイク”がなにか。この世界で言う“ラップバトル”とはどういうものか。この国の状況など。
運転しながらセンバが言うと、先程までの明るい声とは打って変わって、ウランが「おい」と止めるように低い声をだす。むしろこっちが本来のウランだ。
アズール君が笑顔で聞いてくるが、特に驚いたりはしない。俺の部屋に入ったのなら、俺が女性であることも、一緒にいるセンバ達が同性であることもバレるのは仕方ないだろう。なんなら、俺よりセンバ達の方が見た目的にもまだ分かりやすいし尚更だ。
それでも世間的に俺達の性別が知られないのは、俺達ハラジュク・ディビジョンは“Xジェンダー”と宣言しているから。その方が多少女っぽくても分かりづらいだろう。まぁ、表向きそう言っているだけで、ウランとセンバは本当にそういう訳では無い。俺自身は本当だけど。
そんな流れで、俺は自分達が中王区の人間であり、何故本名を名乗っては行けないのか、どうしてこっちの世界でも男性のフリをしているのか、秘密対策部の一貫でこの仕事をしている話も打ち明けた。
車内はどんどん賑やかになっていき、センバやウラン、ユウ君達もが普通に雑談をするようになった。そんなことをしているうちに、左馬刻サマ達がいる事務所へ辿り着く──────────。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。