そして、スカラビア寮へ来て、料理をし始めてから一時間ちょっと過ぎ────────
完成した料理が次々にテーブルに並べられる。寮生に出す分は出来た順に先に運ばれていたが、俺達が食べる分は今出来上がった。俺は金銭的にも時間や材料的にも限りがあるので、自分達が食べる分だけを用意した。
俺が作ったのはちらし寿司に天ぷら。余った物でおにぎりを作ってみた。海苔はちらし寿司に使った刻み海苔しか無かったので、おにぎりに海苔はまけなかったが。
カリム君が言うと、ジャミル君や双子が「お菓子?」と首を傾げた。三人は料理で忙しかったので俺が上げた和菓子を見ていない。
眼鏡君が俺が“和菓子”を持って来たことを話すと、三人は「じゃあ見るのは食べたあとのお楽しみってことで」と言って、今は見ないでおくことに決めたらしい。
テーブルを見回すと、カルパッチョやカレーも置いてあった。ジャミル君が作ってくれたのだろうか。目線の先で気付いたのか、ジャミル君が「食べたがってたろ?」と軽く微笑んだ。
食べたい料理を皿に盛る。だが、食い意地が張っているので、盛りすぎないように気を付ける。座って料理を一口食べてみるが、美味しい。
好き嫌いは特になく、基本的には健啖家なので三人が作った料理を一通り食べてみたがどの料理もユウ君達が言っていたように美味だった。まぁ、俺自身貧乏舌だからなんでも美味しく感じてしまうのだが……。
なんだか食文化交流みたいな感じになっている気もするが、こうやって自分の国にあるものを知って貰えるのは素直に嬉しくはある。
こんな感じで食事会は思っていたより何事もなく楽しむことができ、皿も次々に空になっていく。
今回、自分は結構頑張ったと思う。作ってる最中失敗しないか正直不安だったし、玄米やレシピについても説明出来るように事前に調べていたので良かった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。