第7話

第一章 四話 マカロン ラギー視点
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2022/01/21 19:30
──────────翌日。
俺はレイシ君とは必要な時以外はあまり話さないただのクラスメイト。レイシ君が何処から通ってるとか興味なかったが、まさか元の世界と行き来していたとは驚きだ。昨日の一件でレイシ君について分かるどころか、更に謎が深まった気がする。というのも、レイシ君は学校に来るのは割と早めなのだが、常に疲れきっているというか眠そうにしている。そのせいなのか、たまにボケた天然発言もする。
エース君が異世界に行けるのでは?と聞いた際も、意味深な発言をしていたし元の世界でレイシ君は何をしているのだろう。
ラギー・ブッチ
ラギー・ブッチ
あれ、レイシ君はよーッス
詠永 零熾
詠永 零熾
あぁ……おはよ
教室に入ると、早速机に突っ伏していたレイシ君がおり、相変わらず眠たそうにしている。元の世界の自宅から通ってると言っていたが、家族と一緒に暮らしているのだろうか?
ラギー・ブッチ
ラギー・ブッチ
レイシ君何時も眠たそうッスね
詠永 零熾
詠永 零熾
んーそうかもですね
ラギー・ブッチ
ラギー・ブッチ
普段何してるんスか?
詠永 零熾
詠永 零熾
友人と一緒に街を周って歌ったりしてる。
※訳:チームメンバーとパトロールしてラップバトルしてる。
街を周って歌っている……?
歩きながら友人と歌でも口ずさんで居るのだろうか?どうしよう。それはそれでよく分からない。
ラギー・ブッチ
ラギー・ブッチ
歌、好きなんスか?
詠永 零熾
詠永 零熾
うん。歌声で勝負したりするからね
※訳:ラップでバトルするからね。
ラギー・ブッチ
ラギー・ブッチ
歌声で勝負……?カラオケ行って点数でも競い合ってるんスか?まぁ、なんでもいいけど
歌わなそうなイメージがあったので、これはこれで意外だ。どれだけ歌えるのだろうか。想像がつかない。
話が止まると、レイシ君は再び寝てしまう。その様子から何故かレオナさんの顔が脳裏を過ぎる。
ラギー・ブッチ
ラギー・ブッチ
(あんまし親しくないのもあってか、レイシ君って正直ちょっと近寄り難いんスよねー。学校の中じゃあ良心的な分、何考えてるか分からないっつーか。聞けば答えてくれるけど、自分からはあんま話さないし)
ナイトレイブンカレッジには不良生徒も割といる。
必要最低限ではあるものの、レイシ君はそんな輩にも笑顔で分け隔てなく接する。そして、相手も特に何も言わない。勿論、レイシ君が脅している訳でもない。
クラスに嫌われ者が居たとしても、レイシ君は変わらない態度で接している。怒ってるとこや、誰かの悪口を言っている所も見た事ないし、先生に対しても態度を変えたりしない。
ラギー・ブッチ
ラギー・ブッチ
(なんだろーな。レイシ君には悪さしようとすら思えなくなるっていうか……)
実際、レイシ君が誰かに絡まれたり、問題事に関わってる所は見た事がない。レイシ君と同じで魔法の使えないユウ君なんかしょっちゅう巻き込まれていると言うのに。あれは殆ど一緒にいるグリム君の尻拭いをさせられているとも言えるが。
だとしても、魔法の使えない人間はこの学園では獲物にされやすいはず。
ラギー・ブッチ
ラギー・ブッチ
(レイシ君が初めてナイトレイブンカレッジ来た時ってどうだったっけなー)
一昨年のことなので、ハッキリと全て記憶しているわけじゃないが、意外にも最初からなんのトラブルは無かった気がする。レイシ君自身は帰る方法探したり、お金をどうするかなどで学園長と相談していて忙しかったみたいだが。
ラギー・ブッチ
ラギー・ブッチ
(あれ?そういやぁ、大食堂でレイシ君見かけたことないような……)
昨日もだったが、ずっと教室にいる印象がある。昼食食べてる所見た事ない気がする。
……って、レイシ君について忘れるほど今まで気にしたりしてなかったのに、ユウ君と同じだったこと思い出してから少し気になってきてしまった。
ユウ君はユウ君で見てて面白いッスけど、レイシ君は……やっぱりよく分からん。
ラギー・ブッチ
ラギー・ブッチ
(でも、そうか。ユウ君と同じ魔法の使えない人間か。レイシ君には申し訳ないッスけど、これから何かの役に立てるかもしれないなら、仲良くしておいて損はないッスかねー。相手がレイシ君だからか、らしくもなくちょっとした罪悪感はあるんスけど)
詠永 零熾
詠永 零熾
あ。そうだ。ラギー君
レイシ君に呼ばれ、ギクッと顔が引つる。ぎこちない笑みを浮かべながら「な、なんスか?」と聞き返す。
詠永 零熾
詠永 零熾
これ、あげます。昨日、知り合いから沢山もらったので
そう言ってレイシ君がくれたのはオシャレな箱に入った色鮮やかなマカロンだった。
ラギー・ブッチ
ラギー・ブッチ
なんで俺に?
詠永 零熾
詠永 零熾
少しでも腹の足しになればいいかなーと?あ。甘い物無理とかなら別に無理しなくてもいいですけどね
ラギー・ブッチ
ラギー・ブッチ
甘いのは大丈夫なんスけど……マカロン大量にあげる知り合いってどんな知り合いッスか
詠永 零熾
詠永 零熾
えっとね、まぁそれなりに金持ちな人?僕がマカロン好きなものでしてね。基本的なんでも食べはするんですけど……。たまにこうやってくれたりするんですよ
それなりに儲かってる知り合いって……余計気になるが、レイシ君益々何者だろうかと謎が更に一つ増えた。謎を知ろうと思えば、更に謎が増す。分かりやすそうで分かりにくいかと思えば、結局分かりやすかったり……その逆だったり……本当ミステリアスだ。
詠永 零熾
詠永 零熾
誤解が無いよう言っておくと、さっきの足しになればの話も事実だけど、ただあげたいからあげてるだけですので……気にしないで下さい
ラギー・ブッチ
ラギー・ブッチ
はぁ。でも、有難く受け取っておくッス。にしても、なんか高そーな入れ物に入ってるッスね
詠永 零熾
詠永 零熾
あー、うちの世界で知られてる店のマカロンだって言ってたし……だからじゃないかな?
曖昧に言ってるが、それってつまり有名店……ブランドもんの店では無いのだろうか。でも、こうして異世界のブランドマカロン食べられるなんて早々ないだろうし、悪い気はしない。食えるもんは食っておかないと。
ラギー・ブッチ
ラギー・ブッチ
念の為聞くッスけど……タダッスか?
見返りとかは……
詠永 零熾
詠永 零熾
あげたくて僕が勝手にあげてるだけですから……特にそう言うのはないですよ?
ラギー・ブッチ
ラギー・ブッチ
本当ッスね……?
詠永 零熾
詠永 零熾
本当ですよ。僕、恩着せがましいのは好きじゃないし
……有難いけど、その親切心が少し複雑だったりする。カリム君とはまた違った形の善意が逆に怖い。
ラギー・ブッチ
ラギー・ブッチ
(やっぱ……不思議な子ッスねぇ)

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