第9話

第一章六話 似ている リドル視点
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2020/12/27 04:41
今日の飛行術は合同授業。ラギーの居るクラスと一緒なわけだが、昨日食堂で話していたことを思い出す。ラギーは魔力を持たない“レイシ”という生徒と同じクラスだ。なら、何処かに居るはず。
リドル・ローズハート
リドル・ローズハート
(寮でエース達の話を聞けば、優しげで普通そうな生徒と言っていたが……)
辺りを無意識に見回していると、後ろから「どうかしましたか?」とジェイドに声を掛けられる。教えるか迷ったが、ジェイドにも“レイシ”について話をし、聞いてみた。
ジェイド・リーチ
ジェイド・リーチ
レイシ、さん……ですか?
リドル・ローズハート
リドル・ローズハート
そう。一昨年、僕達が入学したばかりの頃も一時期魔法の使えない人間が現れたって噂が流れてたと思うんだけど……覚えてないかい?
ジェイド・リーチ
ジェイド・リーチ
あぁ……ありましたね。そんな噂。ただその時は、僕達も地上に上がったばかりで人としての生活に慣れるのやら、モストロ・ラウンジを経営するにあたっての準備やらで忙しかったので、詳しくは存じ上げませんが
リドル・ローズハート
リドル・ローズハート
だとしても、それはそれで意外だな。……君達ならなんかしら弱みを握る為調べてると思ったのだけれど
後半を小声で言うが、笑顔のまま「何か?」と聞き返されたので「なんでもない」とはぐらかした。そんな時、少し離れた場所にラギーの姿が見えた。
ジェイド・リーチ
ジェイド・リーチ
ラギーさんに直接伺ってみては?
リドル・ローズハート
リドル・ローズハート
勿論そのつもりだよ。ラギー、ちょっといいかい?
ラギーの元に行き、「なんスか?」と聞かれて誰がレイシなのかを尋ねてみた。
ラギー・ブッチ
ラギー・ブッチ
まだ気になってたんスね
リドル・ローズハート
リドル・ローズハート
一応、ね
ジェイド・リーチ
ジェイド・リーチ
僕も是非お話してみたいですね
ラギー・ブッチ
ラギー・ブッチ
わ、わぁー……そうなんスか
ラギー・ブッチ
ラギー・ブッチ
(ごめんレイシ君。そして、頑張れ)
苦笑いしながらラギーが「あそこにいる、髪をちょろっと結んだ子ッスよ」と教えてくれる。背中を向けていて顔は見えないが、確かに髪を後ろで結んでいる生徒が一人立っていた。
ジェイド・リーチ
ジェイド・リーチ
レイシさんはどのような生徒で?
ラギー・ブッチ
ラギー・ブッチ
え?えぇと……大人しくて、それなりに親切な子ッスよ。今朝も、見返りナシに高そーなマカロンくれたし
ジェイド・リーチ
ジェイド・リーチ
なるほど?大人しくて親切、ですか。それは是非お友達になりたいですねぇ。では、声をかけてみましょうかリドルさん
リドル・ローズハート
リドル・ローズハート
あ、あぁ……
リドル・ローズハート
リドル・ローズハート
(ジェイドに話さなかった方が良かったかもしれない)
早速、「ねぇ、君」と声を掛けると、彼が振り向く。念の為「君がレイシかい?」と確認すると、「そう、ですが……」と不思議そうな目で見られる。
詠永 零熾
詠永 零熾
えっと……何か用事が?
リドル・ローズハート
リドル・ローズハート
僕はリドル・ローズハート。ハーツラビュルの寮長をしている。それで、昨日うちの寮生から君の話を聞いたものでね……
詠永 零熾
詠永 零熾
昨日……?
リドル・ローズハート
リドル・ローズハート
エースとデュースの二人なんだが……
詠永 零熾
詠永 零熾
あー、なんとなく分かりました
ジェイド・リーチ
ジェイド・リーチ
初めまして。オクタヴィネル寮、副寮長のジェイド・リーチと申します。ユウさん以外にも魔力を持たない人がいると聞いたものですから……どんな方かと気になってしまいまして
詠永 零熾
詠永 零熾
……あ
ジェイドが自己紹介をすると、レイシはハッとしたように小さく声を上げた。
リドル・ローズハート
リドル・ローズハート
どうかしたのかい?
詠永 零熾
詠永 零熾
どっかで聞いたことある声だなーと思ったら……知り合いの声に似てるなぁって
ジェイド・リーチ
ジェイド・リーチ
僕の声がですか?
詠永 零熾
詠永 零熾
そうそう。敬語って所が更に似てますねー
ジェイド・リーチ
ジェイド・リーチ
そうですか。そのお知り合いの方というのは、元居た世界の方でしょうか?
詠永 零熾
詠永 零熾
そうですよ。(汚職)警官の方なんですけどね
リドル・ローズハート
リドル・ローズハート
警官の知り合いが居るのか。でも、ジェイドと……警官、ね?
話をしていたらチャイムが鳴り、先生がやって来て授業が始まる。レイシは魔法が使えないので記録係だ。ラギーはまぁまぁそれなりに飛んではいるが、ジェイドは苦戦しているようだ。普段の行いを知っている僕からすれば、見ていて悪くない気分ではある。

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