今日の飛行術は合同授業。ラギーの居るクラスと一緒なわけだが、昨日食堂で話していたことを思い出す。ラギーは魔力を持たない“レイシ”という生徒と同じクラスだ。なら、何処かに居るはず。
辺りを無意識に見回していると、後ろから「どうかしましたか?」とジェイドに声を掛けられる。教えるか迷ったが、ジェイドにも“レイシ”について話をし、聞いてみた。
後半を小声で言うが、笑顔のまま「何か?」と聞き返されたので「なんでもない」とはぐらかした。そんな時、少し離れた場所にラギーの姿が見えた。
ラギーの元に行き、「なんスか?」と聞かれて誰がレイシなのかを尋ねてみた。
苦笑いしながらラギーが「あそこにいる、髪をちょろっと結んだ子ッスよ」と教えてくれる。背中を向けていて顔は見えないが、確かに髪を後ろで結んでいる生徒が一人立っていた。
早速、「ねぇ、君」と声を掛けると、彼が振り向く。念の為「君がレイシかい?」と確認すると、「そう、ですが……」と不思議そうな目で見られる。
ジェイドが自己紹介をすると、レイシはハッとしたように小さく声を上げた。
話をしていたらチャイムが鳴り、先生がやって来て授業が始まる。レイシは魔法が使えないので記録係だ。ラギーはまぁまぁそれなりに飛んではいるが、ジェイドは苦戦しているようだ。普段の行いを知っている僕からすれば、見ていて悪くない気分ではある。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!