No side
今は亡き姉(正しくは姉貴分)の早苗に注意された事を思い出しながら、
慣れない敬語を使いながら自己紹介をする狛魏。
すると、爆豪の母、光己が思い出したように、
「あぁっ!」と言った。
何が起こっているかわからない狛魏は、半ば強引にお風呂に入ることになった。
体に染み渡る温かさにうっとりする。
こんなにお風呂が気持ちいいと思ったことは、これが初めてだろう。
嬉しさのあまり、"個性"で幼児化してしまうくらいだった。
風呂から上がりほかほかしている狛魏の元に、
光己が真っ白なバスタオルと、着替えを持ってやってきた。
申し訳ない気もするが、狛魏が折れ、
洗ってもらうことにした。
渡してもらった服に袖を通して、
リビングに案内された。
そこには、ソファで飲み物を飲みながらテレビを見ている爆豪の父、勝の姿があった。
キッチンに向かった光己は突然「そうだ!」と言い、狛魏の方へ振り返った。
光己は提案しようと思ったのだ。
狛魏の声と共に、ドアの開閉音が響く。
勝己がレジ袋を片手に、帰ってきた。
狛魏に詰め寄る勝己に、母の光己が「今日だけ!」と言う
容赦がない。
そんな光景を見た狛魏は、逆に気分が楽になった。
大好きだった姉が亡くなった狛魏の心には、ぽっかりと、大きな穴が空いている状態だった。
しかし、この爆豪一家のおかげで、少しづつだが、穴が塞がっているような感覚だ。と狛魏は思った。
自分抜きで話が進んでいる状態に、
何も知らない爆豪の苛立ちは増すばかりだった。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。