その日のスキーは何事もなく
フジとも遭遇せず…まああれは偶然だけど…
夜になって…あとは寝るだけ!となった時…あなたちゃんは椅子に座ったまま窓の外を見ていた
こちらを見ずに言う彼女は…
本当に寂しそうで…
聞かずにはいられない
それを聞いた途端に…
彼女の瞳から涙がポロポロ零れ落ちた
俺たちは…
昔お互いを助けたことがある
小学校の頃
周りより小さかった俺は…いじめられていた
「おまえ小さいくせに ちょうし のってんじゃねえよ!」
「こーすけいないとオレらおいはらえもしないのかよ」
「おまえは すみ でおとなしくしてろよ!」
こーすけと一緒だったら何もされなかった
こーすけ見た目的にちょっと怖かったから
でもいなかったら…
袋叩きにされるし、靴隠されるし
大変…
それを…
「うわっあなたちゃん…」
「あいきどうチョーつよいんだぜ?」
「にげよ!」
あなたちゃんは俺のヒーローでもある
その数年後
その貸しは返される
中学校…
あなたちゃんはちょっと浮いてた
そのせいかいじめの標的にされていた
合気道できること隠していて
叩かれたりとか暴力的なことを受けていたわけじゃなかったあなたちゃんは
なにも言わなかった
「ほらあなた、持って」
荷物持ち
「………」
無視…本当に典型的なやつ
「天音本当にまじウケるんだけどw」
「本当にやってくれるんだもんねーw」
「今度何やらせよっか?」
「あっなんだ隣のクラスのちびじゃん」
「なに?ウチら忙しいんだけどー?」
「雑魚は引っ込んでなって感じ」
「(^∀^)σそれな」
「は?何盗み聞きしてんの?感じ悪…」
「はあ!?」
「絶対嘘よ!そんなこと出来るわけないじゃない!」
「くっ…」
「行こ行こ」
「あんなつまんないやつつれてたらあたし達のメンツ丸つぶれなのよ」
それから彼女たちは何もしてこなくなった
これで借りを返した…
ここで俺はあなたちゃんのヒーローになれたかな?
何か話そうとしてくれた後
あなたちゃんは真っ青になってしまった
「ごめん…」と顔を伏せて一言発したあと
また空を見上げ始めた
俺のその言葉に…彼女から返事はなかった…
この時が…
彼女を救う最後のチャンスだった
この時無理にでも聞いておくべきだった
そして気づくべきだった
彼女は精神的にも身体的にもボロボロだって
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!