早く…はやく…ハヤク…と
ふらつきながら
私の足は事故があったあの橋に辿り着いた
橋から真下を見下ろす
暗くなり始めていたため
川は真っ黒に染まりかけていた
まるでブラックホールみたいで…
1度落ちたら上がって来れないような
そんな気がした…
私は身を乗り出そうと、石造りの橋に登ろうと鉄棒の要領で手を付き足を浮かせてその橋の縁に座った
今の私に恐怖心なんてものはゼロと言っても過言じゃなくて…
頭はあいつを求めてて…
それに抵抗しようと身体が"こういう"方向に動いてしまう
完全に暗くなれば、この辺りは車は通っても分からないはず
私が立ち上がって橋から飛び降りようとした時
何かが私の腰に回され
いつの間にか地に足をつけていた
訳が分からない
私を止める人はもういないはずなのに…
この時の私は我に返った感じ
そして一瞬だけ朦朧としていた時のことが記憶の奥に沈む
でも自分で引っ張り出して恐怖する
私は身体中から冷や汗と涙が溢れてその場にへたり込んで
顔を伏せて泣いてしまった
足が…動かない…
〜フジside〜
肩に手を置くと酷く震えていた
これで『歩ける』なんて聞いちゃいけない
これもうお姫様抱っこで運ぶしかないでしょ
そう思った俺は彼女を横抱きにして歩き始めた
暗くなっててよかった…
俺は彼女の方は見れずにそのまま早足で自分の家に向かった
とにかくここじゃだめだ
俺はこの時
彼女の家に上げてしまうなんて頭になく
とにかく早く休ませないと!という思いで頭がいっぱいだった
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!