第16話

2人の過去(Ⅳ)
55
2020/05/01 22:26
2017年10月中旬
天野 僚平
え……?
いま、「もう謝らないで」って言った……?
鈴木 莉生
もう、謝らないで
天野 僚平
な、なんで?なんでだよ?俺は、最低なことをしたんだぞ?
2回も同じことを言われ、思わず戸惑とまどい、上手うまく言葉が出なかった。
鈴木 莉生
私が、僚平りょうへいさんを苦しめてた結果、起こったことだから。それを知ってもなお、「別れよう」とか「最低」とか思えない……
いや、でも──
鈴木 莉生
いいの、本当に。
まぁ、相談無しにそれは少しきついかもだけど……
天野 僚平
ごめんなさい……
衝動的しょうどうてきに出た行動だった。
いつも苦しくて、「風俗ふうぞくに行きたい」と思うことはたまにあった。でも、「駄目だめだ」って思ってなんとかえたり、条件が合わなかったりと、今までけられてきた。
鈴木 莉生
いつ行ったの?
条件と気持ちがそろってしまったときだ。
天野 僚平
この前、「友達と遊びに行ってくる」って言ったとき……
鈴木 莉生
友達と行ったのね……
天野 僚平
いや、違う。嘘をついたんだ。1人で行ってきた。ごめん……
鈴木 莉生
……
「友達と遊びに行ってくる」とメッセージを送ったら、「楽しんで」と返ってきたことを覚えている。
胸が痛かった。
でも、「莉生りおちゃんのため」って思って行った。
今も胸が痛い。

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