2020年5月6日
胸がズキリとした。
いつの間にか合歓の姿はなくなっている。気を利かせてくれたのだろう。
打ち明けるべきか迷う。
──でも、打ち明けて拒絶されたら?
──打ち明けてそれでも身勝手だと言われたら?
咄嗟に出た自分の声が必要以上に大きかったことに気付く。
僚平さんの優しさに涙が出そうだった。でも、自分が涙を流していい立場でないことはわかっている。
それしか言えなかった。
プチッ
大粒の涙がポタポタと床に落ちていく。
僚平さんは信じてくれていた。
1年後に私が帰ることも、別れないことも、浮気をしているわけではないことも、全部──。
その言葉は、今のこの状況の全てを把握している言葉だった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。