第14話

2人の過去(Ⅱ)
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2020/05/01 22:07
2017年10月中旬
鈴木 莉生
……風俗ふうぞく
莉生りおちゃんがいつも泣きそうになる時の声だ。
天野 僚平
うん……
胸が苦しい。だが、今苦しいのは俺より莉生りおちゃんだ。
天野 僚平
すまない……
莉生りおちゃんが泣いている様子はまだ無い。
天野 僚平
苦しかったんだ……。いや、打ち明けられてる側の莉生りおちゃんの方が苦しいのはわかる。本当に申し訳ないことをしたと思ってる……
なにも返答は無い。
天野 僚平
何をしても、俺は莉生りおちゃんの1番最初にはなれない。それが、どうしても苦しかったんだ……
鈴木 莉生
……
天野 僚平
それが風俗ふうぞくに行っていい理由にはならない。わかってる。ごめんなさい……
鈴木 莉生
……どうして行ったの?
泣きそうなのをこらえているような震えた声で莉生りおちゃんが聞いてくる。
天野 僚平
さっきも言った通り、なにをしても莉生りおちゃんの初めての人になれないってことにずっと苦しんでた。このままその感情を持ち続けたら将来に支障ししょうをきたすと思ったんだ……
自分から関係を壊しにいって「将来が」なぞと語る権利はない。後から気付いたって遅い話だ。
鈴木 莉生
例えば、どんな支障を……?
ゆっくり、静かに尋ねてくる。
天野 僚平
莉生りおちゃんのお父さんみたいなこと

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