第4話

置き手紙とペン
38
2020/05/01 21:18
2020年3月8日
天野 僚平
は?なんだよ、これ……?
目の前にある置き手紙。何度見ても莉生りおちゃんの字だ。
そして、その置き手紙の隣には俺が初めて一緒に過ごしたクリスマスにあげたプレゼントのシャーペンがある。大学受験の勉強の励みになってほしいという思いで色々使いやすさを吟味ぎんみして買ったものだ。
色は、莉生りおちゃんによく似合いそうな薄いピンク色。
もう2年近く前のことだ。
いや、今は思い出に浸っている場合ではない。
とにかく、字体もシャーペンも間違いなく莉生りおちゃんのものなので、この置き手紙は莉生りおちゃんが書いたもので間違いないのだろう。
天野 僚平
『1年後には帰ります。探さないでください。』
やはり、そう書いてある。
黙読しても、音読しても、遠くから読んでも、近くから読んでも、どのように読んでも、やっぱりそう書いてある。
……どうしてだ?俺、なにかしたか?
今では聞く相手もいない。
天野 僚平
そうだ!電話……!
慌ててスマホを手に取り、電話をかける。
電話
おかけになった電話は電波の届かない場所にあるか電源が入っておりま──
苛立って途中で切る。
天野 僚平
いや、冷静にならないと
とりあえず、莉生りおちゃんを探さなければならない。彼女が行きそうな場所は……?

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