桜が舞う中、笑いかけてくれる君の顔を
私が忘れることは…きっとないだろう。
今でも、鮮明に覚えている大切な愛の記憶。
でも、愛が故に記憶が消えてしまうのだ。
それは簡単に…それは突然に。
“ 俺と付き合ってください ”
そう言って、顔を赤らめる君。
初めて聞いた時は、すごく驚いた。
でも、何より…すごく嬉しかった。
それから君と過ごした日々は、
幸せなものばかりで……
こんなことになるなんて、想像もしなかった。
君の教室に行った、あの日。
私が君の名前を呼んだ…
どこにでもある日常の一コマ。
“ 君…誰だっけ? ”
私はその一言で、今でも時々不安になる。
その後の記憶は断片的で…
あまり覚えていない。
ただ、君が冗談を言っている訳ではない…
ということだけは分かった。
悲しくて…苦しくて…
とにかく、あの場から逃げ出したかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。