力也side
さてさて、朝食の時間も大分終盤に差し掛かってきた。
樹と翔平なんかは、もうとっくに
食べ終わって仲良く隣同士でテレビを見ている。
あと顔を見てないのは、おチビちゃん達だな。
ガヤガヤ話し声と
ドタドタ階段を降りる音とが混じりあって、
中々朝から派手な登場のちびっ子三銃士。
俺がそう問えば、トコトコと皆の前に三人でやってきた。
満面の笑みで挨拶という名の攻撃を、
朝からぶちかましてきたこの子達は我が家の天使達。
家がベールに包まれたかのよう。
こりゃたまらん。
これまたテクトコ効果音がついてそうな足取りで
三人は席に着くと、可愛らしく
「いただきます」をしてから朝ご飯を食べ始めた。
そんな和やかな空気とは一変。
横から聞こえてきたのは拓磨の半泣き声。
それと同時に陣くんの声も聞こえてきた。
これは雰囲気が悪そうだぞぉ。
時間が経つにつれ、段々と拓磨の目にも涙が溜まってくる。
すると陣くんは呆れ顔で俺に事情を話した。
どこぞの刑事ドラマのピンチシーン宛ら、
お互いの任務を確認し合うと実行に移った←
俺は昂秀を隣の和室へと連れ出した。
皆の前で叱ると空気が悪くなっちゃうから、
家(うち)ではこういうルールにしている。
昂秀も徐々に理解してきたようで、
少しずつ目に涙を溜め始めていた。
涙を溜めるってことは、
悪いことを理解しているってことだから
強く叱らず、なるべく優しく優しく。
俺の手を握りながら、
一生懸命に謝ることを決心した昂秀。
昂秀の小さい手が俺のどデカい手を握る。
コクっと頷いた昂秀は先陣を切って歩き始めた。
リビングに戻ると、
もうすっかりご機嫌が治った拓磨が
再び朝ご飯を食べていた。
陣くんがポテポテと重たい足取りで
拓磨に近づいていく昂秀に気づき、拓磨の肩を叩いた。
懸命に自分の過ち、
意思を伝えた昂秀は拓磨の前で頭を下げた。
拓磨は頭をポリポリと掻き、うーんと唸った。
拓磨が手を広げると、
スポッと抱きついた昂秀。
なんなんだこの可愛い生物は。
ムギゅーと効果音が付きそうなほど、
お互いを強く抱きしめている二人。
いやぁー、いいなぁー。
・・・
見とれていた俺の肩を叩き、
陣くんは時計を指さしながら焦っていた。
周りを見てみると小学生組と彰吾と陸がいない。
恐らくもう既に登校したんだろう。
と、陣くんが怒り心頭な様子で玄関にダッシュ。
しかしそんな陣くんにお母さんが呆れた様子で話しかける。
お母さんの陸のモノマネにツボりそうになったが、
等の陣くんは、言葉で表せないような表情をしていた。
玄関の扉を勢いよく閉め、まともに行ってきますすら
聞こえなかった陣くんに俺とお母さんは顔を見合せ笑った。
ってことで、俺はちびっ子軍団の面倒をみることにする。
まぁいつもこんなドタバタ…ドッカンガッシャン
してる僕たち家族の朝はこんぐらいで幕を閉じよう。
っとカッコよく言いたかったけど、
テレビの前で彼らが
まぁたケンカしてるから幕は閉じれない。
もぉー勘弁してよー!
next…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。