第29話

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2021/02/07 00:41
「若林先生!」

"天堂先生…?"


来生と酒井と別れた後、心臓外科の方に行こうと廊下を歩いていると運良く若林先生が居た。


"急にどうしたんですか、?"


若林先生は気まずそうにしている。


「お話があって来ました。」

"それは…病気の方についての話ですか?"

「はい。」

"ここじゃ人気が多いのでそこの会議室入りましょう。"

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"どうぞ、コーヒーです。"

「ありがとうございます。」

「…まず…すみませんでした。」

"え?"


若林先生は何故謝られたのかも分からないようで、キョトンとしている。


「みのりは俺の幸せを祈ってくれていたのに俺は裏切ってしまった。」

"…"

「あの時も…みのりを守れなかった。救えなかった。」

"天堂先生…"

「みのりも傷つけたのに若林先生の事も俺は傷つけてしまいましたよね、?」

"え…?"

「天国にいる姉が悲しんでしまうって。これ以上不幸にさせないであげてくれって。若林先生、みのりの事大好きでしたもんね。」

"…"

「みのりもまだ元気な時、1ヶ月若林先生が応援で日浦に来た事を思い出しました。」


そう、10年程前若林先生が人手不足の日浦に1ヶ月だけ応援要請で来た事がある。


「いつも笑顔で元気で腕も良い姉を心から尊敬しています、私もあんな風になりたい。そう言ってましたよね、」

"はい…"

「そんな尊敬しているお姉さんが亡くなって、俺が裏切ってしまって若林先生も辛かったですよね…」

"グスッ(泣)"


若林先生はぽろっと一粒涙を落とした。


"すいません…こんなはずじゃ…"

「大丈夫です、いくらでも愚痴って下さい。俺のこと。」


そういうと若林先生は息をスーッと吐いて…


"天堂先生のばかっ!"

「?!」

"お姉ちゃんを裏切らないでよ…"

「…」

"大好きなお姉ちゃんをこれ以上悲しませないでよっ!(泣)"

「本当にすみませんでした…。」


そう言って俺は泣きじゃくる若林先生の背中を優しくさすった。

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