「ただいま。」
罪悪感を抱えながら帰ると、いつも通り笑顔で出迎えてくれる彼女が居た。
『浬さん、おかえりなさい!』
この笑顔に何度救われてきた事だろう。
それなのに俺は裏切ってしまったんだ。
『残業、大変でしたね?』
「あぁ。」
『お疲れ様です!』
「ありがとう。」
バレなければ今までと何も変わらない…この事は墓場まで持って行けばいい。
志帆さんとは一度きりの関係なんだから。
そう言い聞かせる自分が何よりも憎たらしい。
『お腹、空いてますか?』
「うん、ペコペコだよ。」
『カレーライス作ったんです!』
「ありがとう、食べる。」
『はいっ!温め直しますね〜!』
でもやっぱりこの子を悲しい顔にさせてしまいたく無い。
だから俺は…この夜の事を忘れる事にした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。