第3話

裏切り
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2021/01/04 03:01
「ただいま。」


罪悪感を抱えながら帰ると、いつも通り笑顔で出迎えてくれる彼女が居た。


『浬さん、おかえりなさい!』


この笑顔に何度救われてきた事だろう。
それなのに俺は裏切ってしまったんだ。


『残業、大変でしたね?』

「あぁ。」

『お疲れ様です!』

「ありがとう。」


バレなければ今までと何も変わらない…この事は墓場まで持って行けばいい。
志帆さんとは一度きりの関係なんだから。

そう言い聞かせる自分が何よりも憎たらしい。


『お腹、空いてますか?』

「うん、ペコペコだよ。」

『カレーライス作ったんです!』

「ありがとう、食べる。」

『はいっ!温め直しますね〜!』


でもやっぱりこの子を悲しい顔にさせてしまいたく無い。
だから俺は…この夜の事を忘れる事にした。

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