__七瀬side__
数日後。
私は隼人をカフェに呼び出した。
『ごめんね、急に呼び出して。』
"いや大丈夫。どうした?"
『ごめん、私やっぱり天堂先生が1番なの…』
"うん。"
隼人の顔はすごく寂しそうだった。
『だから…天堂先生に逢いに行っても良いかな?』
"いや、それは俺が決める事じゃないから…"
『そうだよね、ごめん。』
すごく空気が重い。
どうしようか…
"会いに行ってなにすんの?"
『謝りに行くの。』
"は?なんで七瀬が。"
『私が悪かったの。』
"お前は被害者だろ?"
『うんん…違う。』
"何があったんだよ。"
私は数日前に里帆さんに話してもらった事を隼人に話した。
こんなに軽々と話して良いのかは分からないけど、隼人にはいずれ話さないといけなかっただろうから良い機会だった。
"そんな事があったんだ…"
『うん…』
"天堂先生の所行ってきな。"
『え?』
隼人は私が浬さんところに行く事を止めると思っていた。
"七瀬は行かないとダメだと思うぞ。"
『…』
私は隼人に気を遣わせてしまっているのか?
隼人は今どんな気持ちなんだろう。
"その代わり…天堂先生に断られたら戻ってきてほしい。"
『え?』
"俺にはお前しかいないから。お前も天堂先生が居なかったら俺しかいないだろ?笑"
そう言って隼人はニカッと八重歯を見せて笑った。
でも昔から一緒にいた私には分かる。
無理をして笑っている事を。
『ごめんね、隼人…』
"いや、全然?お前の幸せが俺の幸せだから。"
隼人はなんて良い人なんだろう…
こんな私にはもったいない人だ。
でも…私は天堂先生に会いに行く。
なにがあっても私のNo. 1の人だから。
思いを伝えて分かり合って、また隣で笑えるように。
"ほら、暗い顔してないで笑え。お前の取り柄は笑顔だけなんだから。"
『それ…褒めてる?』
"すっげぇ褒めてる笑"
『嘘だ笑』
"…頑張れよ、七瀬。"
『うん、ありがと…!』
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!