ピンポンピンポン(チャイム)
家に帰ってぼーっとして何時間経っていたのだろうか。
もう外は真っ暗だ。
それにしてもこんな時間に訪問者…誰だ?
「はい。」
"やっほー!"
"顔、死んでるぞ?笑"
「こんな時間に…」
"心配して来たんだよ?"
"とりあえず入るね。"
来生と姉貴…今から説教かよ…?
"あの写真の相手、志帆さんだろ?"
"志帆さんって…あの?"
「ああ。」
"何があったか、教えてくれないか?"
"私も知りたい。"
俺は志帆さんとのことを話した。
"お前、ほんとバカだな。"
「うるさい。」
"七子ちゃんに言ってたら分かってくれたはずなのにねぇ。"
そんなの俺が1番分かっている。
相談する事ができなかったけど。
"佐倉ちゃんに天堂と話し合ってみたらって言ったんだけどね…"
"七子ちゃんなんて言ってたの?"
"「やっぱり天堂先生には美人がお似合いなんです」って。"
"うわぁ、七子ちゃん言ってそう…"
俺には美人がお似合い…
いや、俺はあいつが1番、七瀬しかいないんだ。
今そんなこと言っても手遅れだろうけど。
"七子ちゃんと話してみたら?"
"いま酒井さんの家にいるよ。"
「いや俺が志帆さんと関係を持ったのは事実だから」
"じゃあ…どうするの?"
「七瀬に任せる。」
"任せるって?"
「七瀬が話したいって言ってくれるなら話すし、別れたいって言うのなら別れる。」
"本当に天堂はそれで良いのかよ。"
「あぁ、俺に決める権利はないから。」
そうだ、俺がごちゃごちゃ言う権利が無ければ、今更お前しかいないなんて言う権利もない。
なにもかも全部、俺のせいなんだから。
"じゃあ帰るね。"
"お前、何か食べろよ。"
"死なれたら困るからね?"
「ああ。」
"じゃあ。"
「ありがとう。」
話を聞いてくれ、共感してくれる来生と姉貴が来てくれて良かったと思う。
でもできるなら…少しでも七瀬と話したい。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。