第34話

ケジメ
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2021/03/05 12:49
__七瀬side__


『ただいま〜。』

"おっ、七瀬おかえり。"

『…隼人。』

"ん?"

『浬さん、来たんだよね?』

"!なんで知ってるんだ?"

『さっき居たから。』

"話した?"

『うんん。』

"そっか。"


本当は浬さんと話したかった……って言ったら嘘になるかも知れない。
あの日浬さんと離れて、私だけ隼人と幸せになって。
どんな顔をして会えば良いのか分からない。
でも志帆さんには時間が無いんだ。
私が浬さんと話をしないと浬さんが手術に参加できないんだ。
私の答えは決まっている。
浬さんは志帆さんを救うべきだ。
だから私は浬さんと話したい。


『隼人、私浬さんと話したい。』

"…"

『話をしたら絶対隼人の所に帰ってくるから。』

"嫌だ…"

『…』

"ずっと七瀬の事好きだったのに、また七瀬を手放すなんて嫌だよ!"

『隼人…』

"今の七瀬は俺のものだ。"

『でも…だからって結婚するなんて嘘をつかなくても良いじゃ無い。』

"…"

『浬さんと会いたく無いなんて私…一言も言ってない!』

"天堂先生のこと、まだ好きなの…か?"

『私、分からないんだよ…誰が好きなのか。』

"…じゃあ行ってこいよ。"

『え?』

"天堂先生が良いんだろ。じゃあ早く行ってこいよ。"

『浬さんが良いなんて私言ってないよ。』

"どうせ結局はそう言う事なんだよ。"

『私はこれからも隼人と居るから。だから少しだけ最後に浬さんと話させてくれないかな?』

"…"

『ケジメなんかじゃない、本当に大切な話なの。』

"分かった、…でも俺のところ帰ってきてくれるんだよな?"

『うん、絶対戻ってくるよ。』

"ありがとう。"


ケジメなんかじゃないなんて言ったけど、本当はケジメを付ける。
私は隼人と一緒になる。
だから浬さんへの好きって気持ちは消すんだ。
浬さんと話して志帆さんの手術を成功させて…私達は別々の道を歩んでいく。

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