第9話

愛する人の幸せ
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2021/01/05 23:43
七瀬は無言で家に入っていった。


「七瀬、」

『はい。』

「本当にごめん。」

『やっぱり浬さんには綺麗な女性がお似合いなんですよ。』

「お前が1番だ。」

『浮気したのに…』


そうだ、俺は浮気をしてしまった。
その事実はどうやっても消せない。


「そうだよな、本当にごめん。」

『別れましょ?』

「え?」


心のどこかで覚悟はしていた。


『今日、浬さんとお話しして仲直りしてクリーム祭りしたいなって思って材料買ってきたのに…』

「七瀬…」

『それなのにあの女の人と楽しそうにお話している所見てしまって、ショックでした。』


七瀬はこんな俺に歩み寄って来てくれていたのに…
俺はまた七瀬を傷つけてしまった。
裏切ってしまった。

愛する人を2度も傷つけてしまうなんて「やりなおしたい」と言う資格すらない。


「本当に、本当に…ごめん。」


今はただ、頭を下げる事しかできない。


『本当に…ひどいです(泣)』


また七瀬から大粒の涙が溢れる。

俺は七瀬を何回泣かせたのだろう。
何回傷つけたのだろう。


「こんな俺に七瀬の夫だと名乗る資格なんかないと思う。」

『…』

「俺はどこで道を間違ったんだろうな…」

「一生守るって言ったのにごめんな。」

「今まで沢山の景色を見せてくれてありがとう、」

「俺が言う事じゃないけど幸せになれよ、七瀬。」

『浬さん…』


あれ、俺の目からも涙が溢れてくる。

七瀬がいない世界でこれから生きていけるのかな。

でもいまは自分の幸せはどうでも良い。
七瀬が幸せなら、俺はどうだって良いんだ。

どうかこんな俺でもお前の幸せを祈らせてくれないか、七瀬。

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