七瀬は無言で家に入っていった。
「七瀬、」
『はい。』
「本当にごめん。」
『やっぱり浬さんには綺麗な女性がお似合いなんですよ。』
「お前が1番だ。」
『浮気したのに…』
そうだ、俺は浮気をしてしまった。
その事実はどうやっても消せない。
「そうだよな、本当にごめん。」
『別れましょ?』
「え?」
心のどこかで覚悟はしていた。
『今日、浬さんとお話しして仲直りしてクリーム祭りしたいなって思って材料買ってきたのに…』
「七瀬…」
『それなのにあの女の人と楽しそうにお話している所見てしまって、ショックでした。』
七瀬はこんな俺に歩み寄って来てくれていたのに…
俺はまた七瀬を傷つけてしまった。
裏切ってしまった。
愛する人を2度も傷つけてしまうなんて「やりなおしたい」と言う資格すらない。
「本当に、本当に…ごめん。」
今はただ、頭を下げる事しかできない。
『本当に…ひどいです(泣)』
また七瀬から大粒の涙が溢れる。
俺は七瀬を何回泣かせたのだろう。
何回傷つけたのだろう。
「こんな俺に七瀬の夫だと名乗る資格なんかないと思う。」
『…』
「俺はどこで道を間違ったんだろうな…」
「一生守るって言ったのにごめんな。」
「今まで沢山の景色を見せてくれてありがとう、」
「俺が言う事じゃないけど幸せになれよ、七瀬。」
『浬さん…』
あれ、俺の目からも涙が溢れてくる。
七瀬がいない世界でこれから生きていけるのかな。
でもいまは自分の幸せはどうでも良い。
七瀬が幸せなら、俺はどうだって良いんだ。
どうかこんな俺でもお前の幸せを祈らせてくれないか、七瀬。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。