第40話

どっちが相応しいか
814
2021/03/11 10:19
__天堂side__


"天堂先生、ちょっと良いですか?"

「はい。」

"ちょっとこの部屋に居てください。"

「はい?」

"待っててくださいね。"

「はい…」


手術の会議後、俺は若林先生にこの部屋にいるよう指示された。
一体なんなんだ。


____


"失礼します…"

「!」

"急にすみません、話したい事があって。"

「あ、ここ座ってください。」

"ありがとうございます。"


そこに来たのは七瀬の彼氏だった。
一応目の前に座ってもらったけど話ってなんだ?


"時間空けてもらってすみません。"

「いえ、大丈夫ですよ。」

"あの…単刀直入に言うと七瀬をお返しします。"

「え?」

"一緒にいても七瀬は天堂先生のことばかりなんです。"

「そんな事は無いと思いますけど…」

"天堂先生も七瀬の事まだ想ってるんですよね?"

「え?」

"分かってます、俺はその間に入れない。だから七瀬は天堂先生に任せようと思って。"

「俺達はもう前に進む事にしたんです、七瀬は彼氏さんとの未来、俺は医者としての未来。」

"それで納得してるんですか?"

「はい、それが七瀬にとっての1番の幸せだと思うんです。だから七瀬を返すなんて言わないで、幸せになってください。」

"…俺の片想いなんです、七瀬は俺の事好きじゃない。"

「そんな事…」

"あります、七瀬には幸せになって欲しいから。"

「俺にはアイツを幸せにする権利なんかないですよ、」

"権利?"

「俺は浮気した様な奴なので。彼女の幸せを祈えるだけで十分です。」

"でもそれは事情があったんですよね。"

「それでも、他の人と関係を持った男と昔からずっと彼女の事を思ってる男とでは絶対俺は幸せになるべきではないです。」

"…幸せになる権利なんて言葉ありますか?"

「…」

"素直に好きなら好きでその言葉に尽きる事はありません。"

「それなら彼氏さんも、」

"俺も七瀬の事は好きだけど…天堂先生にとっても七瀬にとってもお互い2人は唯一無二の存在で俺はそれを越えられない。その間に入られない。"

「でも…」


俺が言葉を返そうとしたその時だった。


『もう2人とも、やめてください…。』


そこには悲しい顔をした七瀬が居て、冷たい声で俺たちにそう言った。

プリ小説オーディオドラマ