教材を別教室まで取りに行き、全教科の教科書やノートに名前を書く
全員が取り終え、一段落着いたところで、由紀先生が声を張った
指をさしながら指示していく由紀先生
なんだかんだ言って、仕事はできるもんね、うん
まあ性格がいまいちアレだけど
って、おお、私英語の課題集めるのね?
あーやだなぁ。普通、ノートとかの向き揃えない?
私のところに持ってくる人、大概揃えないからなぁ
つまり、向き揃えて出席番号順に整えるのがねぇ・・・・・・時間かかるのよ
はー。やだやだ
それだけ行って退出する由紀先生
先生の姿が窓から見えなくなった瞬間から、しーんと静かだった教室が、どっと騒がしくなる
まるで時限式爆弾が、予定通り大爆発しました、みたいに
中には、席の離れた友達のところまで立ち歩いたりする人もいる
約一名変態めいた人間がいるけど無視しよう
えーと、私は英語だっけ?
ひとまず、机の横にかけてあるリュックサックの中からファイルを取りだし、挟んである全教科の課題を抜き取った
ぺらっぺらの本だから、ファイルに余裕で入って助かったよねぇ
うんうんと一人でうなずきながら、どれがどの教科なのかを確認する
英語の課題は自分の机の上に置き、私も課題を提出するために席を立った
幸いというか、出席番号の若い席の人が集めるため、私の席から集める人の席はとても近い
席に座って課題を整頓する花恋に数学の課題を手渡し、次に国語、化学、歴史と順番に置いていく
ふう。これで全部かな
手に持つ冊子が無くなり、もう一度脳内で確認しながら席に戻る
大丈夫だね。さてと・・・・・・
私は机の上に積まれた、ばらっばらの冊子に目をやった
整頓の「せ」どころか「s」すら感じない
もはや最初に私が置いた冊子の上に、寸分違わず綺麗に置く、という脳はないらしい
方向はバラバラ、表裏もバラバラ
もう、なんというか全てがバラバラ
重ーいため息を着きながら、とりあえず1番上の冊子を手に取る
・・・・・・そういや、名前のとこに書かれてるの、1年生の頃の出席番号なんだっけ?
うーわー。まじかぁい
こんなことなら真剣に自己紹介、聞いとくんだったな
聞けば一回で覚えられるのにぃぃ!
見た感じ、この量じゃ全員出てないよね
私のクラスには、35人ほどの生徒がいる
でも私の机に積み重なる冊子は、だいたい20冊あるかないか
うーん・・・・・・
ちらりと前の花恋を見ると、私よりも圧倒的に量が多い
なるほど。嫌がらせか
後から出して私が持っていけないようにしてるんだなー
なんていうか、もう学校生活の全てがめんどいよね
嘆いていても始まらない。仕方ないので作業に取り掛かる
名簿の1つでもくれればよかったのに・・・・・・
苗字の五十音順で出席番号は作られる。それで推測するしかない
あとはまあ・・・・・・ちらほらと1年生の時の同クラもいるみたいだし
とは言っても、覚えているのは呼ぶために使う苗字だけなんだけどね。でも、それだけでもいいから覚えておいてよかった
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。