恐ろしいです、花恋さん
なんとか脱衣場に到着した私は、ただ今花恋により、地味子解除の儀が行われていた
た、確かに・・・・・・地味子は嫌だとは思ってたけど。目立たないのには一番いいし
だけど、何でそんなに生き生きしてるの?
脱衣場の入口近くにある棚の中に、着替えやの入った巾着袋を放り込んだ後、花恋は私の服を脱がさんとばかりにジャージに手をかける
ややややや!
ぷくぅっと可愛らしく頬を膨らませる
いや、ダメです。私は幼稚園児か何かか?
花恋の破壊力抜群の笑顔の耐性は、1年生の途中でついてきた
さすがに四六時中ずっといるし、その度に笑顔は見てきたから
だから・・・・・・頬を膨らませるのにも耐性はついてきてるんです!
可愛い仕草で、上目遣いで見られるとさすがに・・・・・・だけど
なんだろう
花恋の笑顔がすごく怖い・・・・・・っ!
それと、『見返す』がその文字通りの意味として受け取れないのは気のせいかな?
私たちが脱衣場できゃあきゃあ言ってる間も、大浴場では女子たちの楽しそうな悲鳴が聞こえていた
一糸まとわぬ姿になった私と花恋
私が花恋からじろじろ見られているのに恥ずかしさを覚えていると、花恋は気づいたように、私の後ろに回って両肩を持った
肩越しに振り返ると、惜しげも無く均整の取れたプロポーションを晒し、にやりと不敵な笑みを漏らす花恋の顔が
・・・・・・なんか、今日の花恋って、腹黒いというか・・・・・・裏の顔が出てきてない?
うーん・・・・・・と唸っていると、花恋からぐいぐいと肩を押される
目の前には、大浴場へ続く、磨りガラスで出来た、スライド式のドアが
1人だけやけにハイテンションな花恋に促され───というか強要され、渋々ドアの窪みに指をかけ、力を入れた
カラカラカラ・・・・・・と音を立てて開く
ただ、その音はシャワーや女子たちの笑い声によって、雑音の一つとして空気に溶けた
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!