とても落ち着く声
女の子にしては低すぎる。でも、男の子・・・・・・と言われても、少し首を傾げるくらい、透き通っていた
誰なんだろう、ととても気になり、声のした方を向く
私の左隣の席
そこにいたのは、花恋と同じくらい、綺麗な人だった
造作に整えられた、碧のような、黒のような髪
くっきりとした二重に、きりっとした眉
鼻は筋が通っていて、まるで外人のよう
そして立っているからこそわかる背丈は、180超えてるんじゃないかと思うほど
しかも、手足も相当長いし
つまり、イケメンだった
でも、ちっとも唇の端は上がっていない。全く笑ってない
彼が座ると、クラスの女子から黄色い悲鳴があがる
ほーほー
つくづく思う。神様は不公平だと
なんで私の顔は、もっと整ってくれなかったんだろう
まあこちらとしては、目の保養になるから助かるけどね
因みに、神野くんとやらは椅子に座った後、気だるそうに頬杖を着いた
・・・・・・なんだろう。同じ行為なのに私と違って見える
その所作はさながら、王子のようで
何をするにしても美化されるのかなぁとか思いつつ、花恋に視線を戻そうとした時
不意にこちらを向いた、彼と目が合った
ばちっと交じり合う視線
その2人の間に流れる、沈黙
お互いに無表情だし
いや、目が合うと、ちょっと目を離しずらいんだけど?
とりあえずさっさと花恋の姿を目に入れたかったため、かるーく無視して前を向く
花恋にとって、神野くんは黄色い悲鳴をあげる対象ではないらしく、視線は神野くんの後ろの席の人に注がれていた
真面目ちゃんだね、花恋は
んー・・・・・・やっぱ眠いなあ
でも今寝ると、私の頭に雷が直撃する
その後はお坊さんがお経を唱えるが如く、説教が始まる
うん。これ以上目立ちたくないし
ふわぁっと小さく欠伸をし、うっすらと浮かんだ涙を人差し指で掬い取りながら、長い時間が経つのを待った
─────もちろん、依然と私から目を離さない神野くんに、気づくことはない
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!