里見「 … なにこの状況 」
染谷「 なにって … 拷問 ? 」
柴崎「 言い方悪いぞそれ 」
LIP×LIPのせいで かつてのマネージャーと遭遇してしまった次の日 、私は2人に 中庭に呼び出されていた 。
指定された時間に来てみると2人の姿は見えなかった 。
呼び出しておいて遅刻かよ 、と心の中で呟いて スマホを取りだした瞬間 、急に後ろから 地面に押し倒された 。
押し倒された 、というより はっ倒された 、の方が 正しい気もするけど 。
恐る恐る顔を見上げると 仏頂面をした柴崎愛蔵の顔があった 。
里見「 あの 、、どいてもろて 」
柴崎「 あ ? 」
里見「 どいてください 」
柴崎「 じゃあなんで芸能界に戻りたくないのか言ってもらおうか 」
里見「 もうアイドルに憧れるのはやめたの 、ただそれだけ 」
染谷「 違うね 」
里見「 違うってなに 」
染谷「 あんたが嘘つく時は 髪を耳にかける仕草をするって社長が言ってた 」
里見「 っ 、 」
柴崎「 なあ なんでだよ 」
染谷「 嘘つくなよ 」
里見「 … た達に …… 」
柴崎「 え ? 」
里見「 あんた達に言ったって意味ないの !!! 」
柴崎「 おい !!!! 」
柴崎が一瞬怯んだ隙に 腕を振りほどいて走る 。
視界がぼやける 。
この涙は なんの涙なのか 。
苦しさ 、悲しさ 、後悔 、屈辱 。
違う 、この涙は花粉のせい 。なんの関係もない 。
そう自分に言い聞かせて 彼らが私を呼ぶ声を無視して走った 。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。