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第1話

夜の屋上で
1,092
2020/12/17 12:26
hkt side

夜の少し冷たくも心地のいい風に吹かれ、俺は屋上の柵を越えようとしていた。


25歳。俺はアイドルという、世にいうみんなを笑顔に元気にする仕事をしている。
おかげさまで今年の1月にデビューをして、自分のやりたい芝居の仕事もたくさんでき、充実した一年だった、そう普通は思うだろう。でも、そんな中でも心のどこかは空っぽで、衝動的にめちゃくちゃになりたい、どうにかなってしまいたいとそう思う日もあるのだ。それが、ときに死という考えに至ることも……。

そう。今日はたまたまそんな日だった。仕事から帰ってきて、風呂に入って夕飯を食べて、あー、明日はコンサートのリハだなぁなんてテレビを見ながら考えていた。でも、突然なんだわ。

「あ、もう俺いいかな。いなくなって。メンバーには申し訳ないけど」

こう思ってしまうのは。

自殺はよく衝動的って言うけど、本当なんだよね。そこからの記憶はあまりない。ドア出て、エレベーターのって、屋上まで行く階段のぼって、気づいたら屋上の柵を越えようとしていた。
「あー、今日は一段と夜景がきれいだな」
そう、柄にもなくつぶやいて、柵を越えた……、その時だった。

??「あーー!!!命無駄にしようとしてるイケメン発見!!!いけないんだ!!いけないんだー!!!」

誰だよ。しかも話し方がうざい。声でかい。そうイラツキながら、後ろを振り返った。
そのとき俺の周りから音が消えた。なぜなら、この世のものとも思えない、まぁこれが美少女と言うんだろうなという女が立っていたから。俺が話しかけようとすると、またその美少女は喋りだした。

??「あ、やっぱりイケメンくんだった笑
ねぇ、そこの命を落とそうとしてる最低くん。
自殺するとその人どうなっちゃうか知ってる?」

なんだ、この女。そう思いながら俺は答えた。

(hk)「知ってるよ。天国にも地獄にも行けなくて、この世を彷徨うんだろ??」

??「なんだ。知ってるじゃん。まぁ、それだけじゃないんだけど…。まぁいいや。じゃあ、なんで、そこまで知ってて死のうとしてるの?まさか“なんとなく”じゃないでしょうね??」

俺はドキリとした。図星をつかれた。何なんだこいつ。

(hk)「うるせぇな。ってかお前誰だよ。なんで、ここにいるんだよ??」

??「あ〜、話ずらした。まぁ、いいや。私はね……。ってか、人に名前聞く前に自分の名前くらい名乗ったら!??」

やべぇ。こいつめちゃくちゃめんどくさい。
だが、なぜだかこいつから目が離せない。

(hkt)「俺?俺は『北斗』、は…?」

俺と目の前のやつとの声がかぶった。

??「北斗でしょ。私は君のことを知ってる。そして、君も私のこと知ってる。でも、わすれちゃっただけ。」

おれはこの短い時間に何度驚けばいいのか。そして、なぜこんなにこいつのペースに巻き込まれるのか。

??「まぁ、でもよかった〜。ちゃんと北斗くんのところに来れて!運が悪いと自分の行きたい人じゃない所に着地しちゃからな〜。って、お〜い。人の話聞いてる〜??ほくとく〜ん!??」

俺はもう目の前のやつの話が全く入ってこない。
あ、こいつのペースに流されててわすれたけど、

(hk)「そういうお前の名前は何なんだよ。」
??「ん!?あ〜!そうだった〜!!私はね〜」

第2話に続く……



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