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2020/12/24

第12話

記憶 ③
(寧々side)
ほっくんが撮影に行っている間、私はソファにごろんとしていた。正直言うと体がだるい。起こしてられないからだ。

ここで、少し種明かしをしよう。
みんなが気になっている、ほっくんの記憶がないことについて。

私が死んだのは15歳になった日だった。天界というとファンタジーのように聞こえるかもしれないが、そこの決まりとして、20歳に満たない年齢で死んだ子供には、2つの選択肢が与えられることになっている。
それは、
「一番大好きだった人の心にずっと残れるかわりに、もう二度とその人に会えない」
「死後10年以内であれば、大好きだった人の記憶を消す代償として、1度だけ自分の一番会いたい人のもとへ会いに行ける」
の二択。

私は迷わず、後者を選んだ。みんなだってそうするでしょ?
でも、これは天界の罠。一度消した記憶を大好きな人が思い出してくれるとは限らない。
私は、何度も、そういう子たちをそばで見てきた。だから、なかなかほっくんに会いに行く
勇気がなく、知らぬ間に条件ギリギリまで来てしまったのだった。

私は、ほっくんなら絶対思い出してくれると信じていた。今でももちろん信じている。だが、もしかしたら私も、上手く行かなかった子たちのように泣いて天界へ帰ることになるかもしれない。そんなに現実は甘くない。そう痛感させられた。 


体のだるさはますます増していく。もう時間がない。そういえば、猫は自分の死を察知すると、知らぬ間に飼い主のそばから消えていなくなるというのを聞いたことがある。まぁ、私はすでに死んでいるが、。ならば、せめて大好きな人が住む、あの温かい部屋で本当の意味の最期を迎えたい。

そう私は思い、重い体をなんとか起こし、ほっくんに気づかれないように、ほっくんが住むマンションへと歩いていった。

(hkt side)
youtubeの撮影が終わり、寧々が待つ楽屋へ帰ってきた。だが、そこは寧々の姿はなかった。
ヒュっと喉がなった。それと同時に、京本が、「北斗。時間がない。早く家に帰って。」
と焦った様子で、俺に向かって話しかけてきた。
京本の言葉に押され、俺は急いでマンションまで戻ることにした。

その道中だった。俺の中3の頃になくしていた記憶が蘇ってきたのは。

そうか。寧々は、俺が中3の頃、病院で、屋上に行く階段で、出会ったあの少女だったのか。ひまわりが咲いたような笑顔。落ち込む俺を包み込んで励ましてくれたあの温かい手。俺の初恋の人。
俺は退院してから、毎日お見舞いに行っていて、寧々と約束した、誕生日プレゼント片手に部屋に入ると、そこは空になっていて……。
あとから、寧々の両親に聞けば、15歳になるその日の朝になくなったそうだ。


全部、全部思い出した。なぜこんな大切なことを忘れてしまっていたんだ。

寧々。まだいなくならないでくれ。最後に言いたいことがあるんだ。お願いだ。
そう思って、肩で息を切らしながら、ドアをひいた。そこには、
「寧々!!!」

会いたくてたまらない人が、床に仰向けになって倒れていた。

最終話へ続く。

次回、最終話です。最後までぜひお楽しみくださいませ。