(hkt side)
あのあと、寧々と言い合いになった結果、俺のほうが折れ、寧々を仕事場に連れて行くことになった。
今日は、6人でのyoutubeの収録。もちろん楽屋は一緒。そこにどこの馬の骨ともわからない、しかも女を連れて行ったらどうなるか、俺は現場につくまで、ドキドキしっぱなしだった。運のいいことに、俺らは一番乗りで楽屋についたため、質問攻めに合うことはなかった。
(寧々)「ほっくん、なんの仕事してるの?」
興味津々に聞いてきたため、俺は素直に答えた。
「アイドル、ジャニーズの」
その言葉を聞いて、寧々は、くるっと後を向いて何かを囁いた。
(寧々)「(ボソッ)約束守ってくれてたんだね……。」
俺には、なんて言ったかまでは聞こえなかった。そのとき、寧々は俺に抱きついてきた。ふわっと、どこか懐かしい花の香りがした。
「お前、どうしっ……。」
(寧々)「やっぱほっくん大好き!ほんとに昔から変わらない。ありがとうありがとう。」
何に対しての「ありがとう」なのかわからないが、泣き笑いのような寧々の声をきいて、俺はなぜだか安心しきっていた。
そのときだ、遠くから、ジェシーと京本の歌声が聞こえてきた。やばい。早くこいつどうにかしないとバレるっ!!
「寧々!!どこか隠れろ。」
(寧々)「え、いま寧々って。ほっくん!!」
「あー、あとでたくさんかまってやるからとりあえず隠れろ。」
(寧々)「え〜、大丈夫だってば〜!!」
「いや、大丈夫じゃないっ!はやく、!」
ずっと、大丈夫と言ってる寧々の上に近くにあった少し大きめのブランケットをかぶせた。
(寧々)「ほっくんのばか〜!!えっち〜〜!!んっ、〜〜〜〜〜!!!」
なんかとてつもないことを言われている気がするが、そんなことを気にしている場合じゃない。奴らの足音が徐々に近づき、ガチャっといって、扉か開いた。あぁ、終わった。そう思ったとき、
(ジェシー)「おはよ!!北斗!AHA!!何その格好笑AHAAHA!!!」
「いや、これは……。」
(京本)「北斗のその下って何?もしかして、俺らへのプレゼント?」
そういって、京本は、必死に隠していたブランケットの端を持って、思いきり引っ張った。するとそこには……。
誰もいなかった……。
嘘だろ。あいつどこいった。そんな一瞬で逃げれるすきなんてなかったはずなのに。
(京本)「なんだ〜。何もないじゃん。なんで、そんな必死な顔してたの?」
俺は、驚きすぎて、なんとかひねって出した答えが、
「虫がいてさ、ほらお前ら虫苦手だろ?驚かせないように隠してたんだ。」
と、小学生でも思いつく苦しい答えをしてしまった。
京本は、まだ俺を疑っている顔をしているが、ジェシーが
(ジェシー)「北斗、そうだったんだね!ありがとう!大我!なんか飲み物買いに行こ〜!」
とその話を終わらせてくれて、ことは収まり、俺一人となった。すると、後ろから「ほっくん!ほっくん」と寧々の声がした。
「お前どこにいたんだよ。」
(寧々)「え、ほっくんが、隠れててって言うから隠れてたよ。ブランケットの下で。」
うそだろ?だって、京本がめくったときになんの姿もなかった。まさか、こいつ……。
「お前もしかして、生きてないのか」
そう言って、寧々は一瞬、バツが悪そうな顔になって、すぐにいつもの明るいあの顔に戻っていった。
(寧々)「そうだよ。私は10年前に亡くなってるよ。」
そういった。俺は
「それってどういう……」
と聞き返そうとした、そのときだった。ガチャっとドアがあいて、二人が戻ってきた。慌てて隠そうとした。そのとき寧々は、あるメンバーの名前をつぶやいた。
(寧々)「大我くん……??」
ジェシーはもちろん寧々の存在に気づいてない。だか、京本は、俺の後ろにいる寧々の姿をバッチリその目に捉えていた。
第8話に続く……。
ここに来て、北斗以外にも寧々の存在が見える人物が登場しました。さて、この続きはどう進展していくのか。お楽しみに!
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。