(taiga side)
寧々は、俺が小さいとき、喘息で入院していたときに初めて仲良くなった女の子だ。暗いところが苦手な俺は、同じ部屋だった寧々に随分と助けられた。本人には言っていないが、俺の初恋の人でもある。内緒だけどね。
その後、俺は無事退院し、小学校、中学校、高校と学年が上がっていっても、多いときは週に一回、少なくとも月に一回は、必ずお見舞いに行っていた。そんなある日、寧々が楽しそうに嬉しそうに、話の中に出てきた名前が「松村北斗」だった。まだ、そのときはお互いジャニーズで顔を合わせる程度で、正直、「北斗」と言う名前を聞いてもピンとこなかった。
高校にあがると、その「北斗」改め「松村北斗」という人物は、俺に以上に懐いてきて、ある日寧々のことを聞いてみたのだ。
「ねぇ、そういえばずっと聞きたいことがあったんだけど」
(北斗)「何?きょうもっちゃん」
「村岡寧々さんって知ってる?」
俺は、「うん、もちろん。彼女はね…」という答えが返ってくると予想したが、実際は思わぬ答えだった。
(北斗)「ムラオカネネさん??う〜ん。知らないなぁ。きょうもっちゃんが女の子の名前出すの珍しいね、その子がどうかしたの??」
「え、北斗ほんとに、ほんとに知らないの?」
(北斗)「うん。ってかどうしたの、きょうもっちゃん。そんな焦って。俺がなにか大犯罪を犯したような目をしてるじゃん」
「いや、そうか。俺の思い違いか〜。ごめん、なんでもないわ。気にしないで〜。」
とは言いつつも俺は信じられない気持ちでいた。なせなら、寧々から聞いていた「松村北斗」の特徴、それから彼がアイドルを目指しているという情報と一致していたからだ。
それからもう一つ、そのときから、ずっと疑問に思ってたことがある。それは、「北斗」が、中学3年生の一部の記憶が欠けていることだ。 寧々は俺の一個下、「北斗」も同い年で、彼の名前が出てきたのは、ちょうど二人が中学3年生の時期だ。
そして、寧々が亡くなったのも…………。
俺はずっとそのことと北斗の記憶とが関係があると思っていたが、寧々はもういないし、北斗も北斗で覚えていないため、お蔵入りになるかもしれないとこだった。
そんなとき、まさか、なくなった彼女が、このタイミングで現れるなんて思っても見なかったが、この際だ、長年、疑問を抱いたことを直接彼女に聞いてみることにした。
「ねぇ、寧々、なんで北斗は寧々のことを覚えてないの?」
第10話へ続く………。
さて、物語も佳境に入ってまいりました。はじめての作品なので、伏線を回収できるか不安ですが、頑張って最後までかきあげたいと思うので、引き続きよろしくお願いいたします!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!