なんの変哲もない紙に
思いと”魂”を込めて書きなぐった文字は
姿が変わっていき
気がつけばノートの1ページへと変わった
書き上げた紙を抱え
先に用意していた不死川さんと共に
炭治郎の元へ急ぐ
どうか、どうか間に合ってください
そして勝手に終わらせる身勝手さを許してください
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顎の下につけたグーの手
水分多めなうるうる瞳
完璧な[か弱くて守られる立場の女の子]だ
でも、この世界にいるには
力が弱すぎる
不死川さんを見ると、静かに頷いて合図をしてくれた
最後の勇気を出して
ギュッと紙に力をこめる
シーン……と無言の空気が流れ
背中には冷たい汗が流れる
だが、まだ私は続けなくてはならない
必死にテレパシーでセリフを送ると
近くから焦ったような草の擦れる音がした
おずおずと、といった様子で草陰から出てきた第三者に
”主人公”の顔色が変わった
私達以外は話していない、誰も動かない空間の中で
あなたの声は、ハッキリと全員に聴こえた
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。