震える小さな声で絞り出した言葉は
地面に吸い込まれて消えた
発言に違和感をおぼえ、そのままを口に出す
私達の会話を裂くようなけたたましい音と共に
私達が乗って来た大型バスが森の中に現れた
私は、バスのタイミングの良さと
チラリと後ろを見れば動きを止めている人や木々に
寒気のようなものを感じながらバスに乗り込んだ
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『2度目のご乗車ありがとうございます』
『4名とも無事にお戻りになられたのは幸いです』
『申し訳ございません、下ろした先でのことは言えないのです』
『ですがワタシ自身のことでしたら、ご自由にお聞き下さい』
『木に、凡から点を除いて几と書いて、キキと申します』
『いえいえ違います、あなた方が乗ってきたのです』
『一瞬でも乗られる方は意外と多いんですよ』
『思い出せないのならそれでもいいですよ』
『ワタシがしているとも言えますし、座る方がしているとも言えます』
『人それぞれの席があるんですよ、大切な席が』
『さて、皆さん』
『次の場所に近づきましたよ』
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。