『鬼滅の刃〜、鬼滅の刃〜、お出口前方です』
呑気な声をしたアナウンスと共に
バスが緩やかに停る
一人ずつバスから降りた途端
バスの閉まる音が背後から聞こえ
バスは霧のように消えていた。
有り得ない状況に戸惑いつつも
バスから降りた場所を見渡す
耳をすませると花澄が言った通り足音が聴こえた
近づくソレに警戒して、全員で木の影に隠れる
もしかしたら鬼かもしれないし
モブ隊員かもしれない
しかし、その心配はすぐに無駄と知った
隊服をきた女の子が独り言を言いながら
涙目で通り過ぎていくのを
ただただ、私達は見ていた
そして女の子が完全に見えなくなった後
顔を見合わせる
女の子、『主人公』が走って行った方へ
私達は向かってみることにした
主人公がいない場所での話は無いことになるのが夢小説の掟なら
それはイコール私達の存在すら消える可能性がある
それが怖かった
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歩いた先にあったのは
大きな屋敷で
少し狼狽えてしまう
隊員「あの、何か用ですか」
ワタワタと話し合っているのが見えたのか
見覚えのある隊服を着た顔の見えない人が話しかけてきた
二人が突然、焦ったように隊員に対して話を始める
そしてわけもわからないまま、私は
花澄さんの手によって地面に身体をぶつけられた
隊員「わ、わかりました!すぐに運ばせていただきます」
地面に伏した私の頭上でなにやら会話が交わされているが
私はただ、後で覚えてろ…と怒りを堪えていた
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!