第3話

鬼滅の夢
296
2020/05/14 14:00
『鬼滅の刃〜、鬼滅の刃〜、お出口前方です』

呑気な声をしたアナウンスと共に

バスが緩やかに停る
花澄
花澄
着いたね、どこだか知らないけど
茉桜
茉桜
降りてみればわかるんじゃない?
雪華
雪華
そうですね、降りましょう
一人ずつバスから降りた途端

バスの閉まる音が背後から聞こえ

バスは霧のように消えていた。

有り得ない状況に戸惑いつつも

バスから降りた場所を見渡す
茉桜
茉桜
ここは森、かな
花澄
花澄
よくこんな道、バスが通れたね
雪華
雪華
なにもかも不思議な状況だから、それくらいは簡単なのでは
美空
美空
とにかく、ここは鬼滅の刃の世界なんだから誰か見つけた方がいいんじゃないかな
茉桜
茉桜
そうだね、自分達は武器が無いから鬼が出たら戦えないし
花澄
花澄
あ、誰か走ってくる音がします
耳をすませると花澄が言った通り足音が聴こえた

近づくソレに警戒して、全員で木の影に隠れる

もしかしたら鬼かもしれないし

モブ隊員かもしれない
しかし、その心配はすぐに無駄と知った
(なまえ)
あなた
うぅっ……一人で行けないよぉ……
(なまえ)
あなた
たんじろーさんもいっしょに来てくれないなんてできるわけないです………
(なまえ)
あなた
ってダメダメ!私ががんばらないと!
隊服をきた女の子が独り言を言いながら

涙目で通り過ぎていくのを

ただただ、私達は見ていた

そして女の子が完全に見えなくなった後

顔を見合わせる
茉桜
茉桜
……あれがきっと『主人公』だろうね
雪華
雪華
主人公……?
花澄
花澄
たぶん、私達は鬼滅の刃の夢小説の世界にいるんだと思う
花澄
花澄
そしてさっき通ったのがおそらく『主人公』
美空
美空
夢小説の説明もいる?
雪華
雪華
いえ、いきなりのことで少し考えが追いつかなかっただけで夢小説は知ってます
雪華
雪華
しかしなぜ、私達は夢小説の中に……
茉桜
茉桜
それはわかんないけど追いかけた方が良くない?
花澄
花澄
主人公がいないと話進まないし
雪華
雪華
そうですね、後をついて行きましょうか
美空
美空
あの主人公の夢小説はちょっとヤだけどね
女の子、『主人公』が走って行った方へ

私達は向かってみることにした

主人公がいない場所での話は無いことになるのが夢小説の掟なら

それはイコール私達の存在すら消える可能性がある

それが怖かった
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雪華
雪華
屋敷に着いてしまいました
美空
美空
ここ、入っていいのかな
茉桜
茉桜
いやダメでしょ
歩いた先にあったのは

大きな屋敷で

少し狼狽えてしまう
花澄
花澄
蝶ならワンチャンありますかね
美空
美空
でもただの藤の家かもしれないよ
隊員「あの、何か用ですか」

ワタワタと話し合っているのが見えたのか

見覚えのある隊服を着た顔の見えない人が話しかけてきた
美空
美空
え、えっと……
茉桜
茉桜
た、助けてください、友達が、友達が化け物に…!
花澄
花澄
…!
花澄
花澄
お願いします…!友達を助けてください…!
二人が突然、焦ったように隊員に対して話を始める

そしてわけもわからないまま、私は

花澄さんの手によって地面に身体をぶつけられた
雪華
雪華
あ、ああ、もう身体に力が入らないのね?
花澄
花澄
お願いします、どうか手当てだけでも…!
茉桜
茉桜
このままじゃ、この子……!
隊員「わ、わかりました!すぐに運ばせていただきます」

地面に伏した私の頭上でなにやら会話が交わされているが

私はただ、後で覚えてろ…と怒りを堪えていた
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