暗い廊下、白い髪の怖い人
その場に立つ若い女の子
間違いなく、他人から見たら事案である
不死川「……秘密は守れるか?」
不死川「なら、今からする話は誰にも言わないでほしい」
不死川「俺は、いや……私はこの小説の主人公、だった」
不死川「不死川成り代わり夢小説の」
不死川「ある日、一人の少女が突然[登場人物]として現れ」
不死川「それからこの小説は変わっていった……」
不死川「最初はずいぶん愛でられているな、と思っただけで何もおかしく無かった」
不死川「だが、だんだんとストーリーの場面はその少女に絞られていって」
不死川「気がつけば、少女はあなたと呼ばれ」
不死川「私は、ただの”不死川実弥”として扱われるようになっていた」
不死川「私は、自分が”主人公”であった記憶がある。だが今の主人公はあの少女なのもわかっている……。」
不死川「ただただ辛くて、仕方がない」
不死川「”主人公”に戻れないなら、私は消えて普通の不死川になりたい」
不死川「そう思って、過ごしていたら」
不死川「君達がやってきた」
不死川「この世界の住人でも、あの少女の仲間でも無い君達が」
不死川「だからお願い、助けて……」
不死川「この小説を終わらせて、私を解放してほしい……」
不死川「ありがとう」
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密会がバレないように暗い廊下からバラバラに出る
元々の主人公と今の主人公
なぜ二人になった?
そしてなぜ私達は……
聞いた話を反芻し、考え込んだ時
玄関の方から激しい音と大きな声が聞こえた
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!