「じんたん、ごめん…」
真夏の昼下がり、ソファーでスマホをいじっていた俺に、テオくんが汚れた布団を差し出しながら、蚊の鳴くような声で謝罪してきた。
「それ、なに」
「じんたんの布団…」
「それは見たらわかるけど、どうしたの」
「じんたんの布団に、コーラ、こぼしちゃった…ごめん」
テオくんは更にしょんぼりした顔でそう言った。
なんだそんなことか、べつに俺はそんなことで怒ったりしないのに。
え、そんな落ち込む?
「そんなの気にしなくていいよ、今日は代わりの布団で寝るからさ」
「いや、夏用の布団これしかないじゃん…じんたん冬用の布団で寝ることになっちゃう…」
なるほど、それでテオくんはこんなに謝ってくるのか。
まあでも仕方ない、今日は冬用の布団で寝るか。
暑い日が続いてるし、洗濯しても明日には乾くだろう。
1日だけ辛抱だ。
「いいよテオくん、冬用布団で寝るから」
「え…いやいやじんたん、こんなに暑いのにそんなので寝たら絶対熱中症になるで?」
「でもしょうがないじゃん!」
「だからさ、俺の部屋で寝ない?」
うん???
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!