第19話

いじわる警官に甘く迫られて
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2020/10/27 04:00
別れ話から一転。

私と来栖さんはリビングのソファに腰かけながら、互いに近況報告を終えた。
来栖
来栖
中野警視長には、
心に決めた人がいるって
ちゃんと断ったから安心しろ
栞那
栞那
……心に決めたって、
それは……、もしかしていつの日か、私をお嫁にもらってくれるって解釈してもいいの!?

いや、さすがにそれは自惚れすぎ?

中野さんとの張り込みについてや、中野さんのお父さんについて、包み隠さず話してくれた来栖さんに不安はほとんど解消されて、いつぶりだろうってくらい、スッキリした気持ちになる。
栞那
栞那
……っ、
───なのに。

来栖さんを見ると、つい、さっきのキスを思い出して、勝手に恥ずかしくなっては目を合わせられずに俯く。

そんなことを、もう何度も繰り返している私を、来栖さんが許してくれるはずもなく。
来栖
来栖
おい、目逸らすな
ソファの上で、私の方へ向き直った来栖さんに、そのまま背中から抱きしめられる。
栞那
栞那
……ご、ごめんっ
なんか恥ずかしくて目見れない
来栖
来栖
……じゃあ、慣れるまでするか
栞那
栞那
えっ、……んっ、
来栖
来栖
……好きだよ、栞那
今まで、1度もキスしてくれなかったのが嘘みたいに、来栖さんは隙あらば私にキスを降らせて、唇が離れたあと、必ずいじわるに笑う。

今日の来栖さんはいつもの数百倍と言っても過言ではないくらい甘々で、明日の朝、胸焼けしたらどうしよう……なんて本気で心配になってくる。
栞那
栞那
”好き”って、言ってくれたの2回目だ
来栖
来栖
は?もっと言ってんだろ
栞那
栞那
言われてません。
付き合う時と今の2回きり!
来栖
来栖
……思ってるだけじゃ
伝わんねぇってほんとなんだな
私を後ろから抱きしめながら、私の肩におでこをコツンと乗せる来栖さん。今日はやけに甘えん坊で可愛いな、なんて……言ったら怒って離れてしまいそうだから、胸の中でひっそり思っておこう。
来栖
来栖
こんなことなら、
我慢なんてしなきゃ良かったな
栞那
栞那
……我慢?
来栖
来栖
きっと、手ぇ出さないことでも
不安にさせてたんだろ?
栞那
栞那
……そ、それは……
来栖
来栖
俺の中で、栞那が高校卒業するまで、
手ぇ出さねぇって決めてたんだよ
来栖
来栖
……ま、結局は
別れ切り出されて焦った挙句
キスしちまったけど
来栖
来栖
大事にしたいと思ってる。
栞那のことも、栞那との将来も
栞那
栞那
来栖さん……っ
まさか、来栖さんがこんなことを思ってくれてたなんて、知らなかった。

……来栖さんが手を出してくれないことで、”自分に魅力がないんじゃないか”なんて、くだらないことを悩んでいた自分をぶん殴ってやりたい。
栞那
栞那
あぁ、もう!早く大人になって、
私が来栖さんの彼女だって
堂々と言えるようになりたい……
栞那
栞那
早く、誰にも文句が言われない
来栖さんの彼女になりたい
”未成年”って言葉が憎い。

この先、私と来栖さんの関係を、もしも”犯罪”だと言う人が現れたらどう戦おう?どうやって来栖さんを守ろう。
来栖
来栖
……誰にも文句なんて
言えなくすればいい
栞那
栞那
えぇ、そんな簡単に……
来栖
来栖
簡単だろ
そんな自信満々な声に、来栖さんに抱きしめられたまま顔だけ来栖さんを振り返る。

至近距離で目が合って、また恥ずかしさがジワジワと襲ってくる。
来栖
来栖
来栖 栞那にしてやるよ
栞那
栞那
え?来栖 栞那……?
……それって、
来栖
来栖
高校卒業したら、結婚しよう
来栖
来栖
そしたらもう、
誰にも文句言えねぇだろ?
……どうしてこの人はいつも、こうも突拍子もなく私を喜ばせるんだろう。

嬉しくて、嬉しくて……今すぐ”YES”と叫びたいのに、嬉しすぎて言葉が出てこない。

私の返事を待つ来栖さんの顔が、段々曇って不安そうに歪む。
栞那
栞那
……違う、嬉しくて……
言葉に、ならないの!
栞那
栞那
来栖 栞那にしてください。
私で良かったら、末永く……
よろしくお願いします!
来栖
来栖
……ふざけんな。断られたら
どうしようかと思っただろ、バカ
安心したように笑った来栖さんが、私の頬を包み込んで、優しく啄むようなキスをくれた。

まるで、”結婚の誓い”みたいでドキドキした。
栞那
栞那
好きだよ、俊太さん
来栖
来栖
───っ!!

お、まえ……
栞那
栞那
なぁに、俊太さん♡♡
来栖
来栖
……どうせなら、
キスの合間に呼べるくらいになれ
栞那
栞那
え、
来栖
来栖
そうと決まれば練習だ
へばんなよ
いじわるさに日々磨きをかけて、出会った頃からは考えられないくらい甘く甘く私に迫る来栖さん。
栞那
栞那
ちょ……まっ、
来栖
来栖
待ったナシ
こうして、いじわる警官に甘く迫られる夜が更けていく。

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