無料ケータイ夢小説ならプリ小説 byGMO

第18話

離してなんかやらない
───来栖さんは、何も言わない。
私の言葉に、”分かった”も、”いやだ”も何にも。

何も言わないってことは、きっと来栖さんも別れることに”賛成”なんだろう。

最初から、無理があった。
ストーカー被害者と、その担当警官。

そこで私たちの関係を終わらせたら良かった。
来栖さんといる幸せを知って、甘やかされて、今更……来栖さんを手離したら、私はきっとダメになる。

だけど、来栖さんをダメにするよりずっといい。
栞那
栞那
じゃあ、
「切るね」そう続くはずだった言葉を、
来栖
来栖
で?
短い言葉で来栖さんが遮った。
栞那
栞那
え、
来栖
来栖
言いたいことはそれで全部か?
栞那
栞那
……うん、
言いたいこと、なんて山ほどある。
全部なんてとてもじゃないけど、伝えきれるわけがない。

だけど、これ以上電話を続けたら泣いてることが来栖さんにバレてしまいそうで、今は、少しでも早く電話を切りたい。
来栖
来栖
なら今度は俺の番だ、開けろ
栞那
栞那
えっ、
───ピンポーン、とインターホンの音。
ソファに沈んでいた体が、ビクッと震える。

……開けろ、って……もしかして、
来栖
来栖
早くしろ、バカ
栞那
栞那
……っ、
電話口から、苛立ちを隠さない来栖さんの声。
慌ててソファから立ち上がった私は、急いで玄関の鍵を解除して、ドアを押し開ける。

───そこには、
栞那
栞那
来栖さんっ……なんで、
久しぶりに見る……愛しい人。
その顔は、いつになくムッとしていて、どうやら怒っているらしい。
来栖
来栖
……っとに、バカだな
栞那
栞那
えっ、
───フワッ、
栞那
栞那
っ!?
ギュッ、と強く抱きしめられる。
だけど不思議と苦しくない。

ドアが静かに閉まる音だけが部屋の中に響いて、私は来栖さんの背中に腕を回せないまま戸惑っている。

だって、ついさっき別れを告げたはずなのに。

……来栖さんの腕の中にいる。
何これ、夢?
栞那
栞那
来栖、さん……?
来栖
来栖
……悪かった
絞り出すように言葉を口にした来栖さんに小さく首を振る。

だって、来栖さんは何も悪くない。
謝る必要なんてないんだから。
来栖
来栖
今日は元から仕事終わりに
会いに来るつもりで向かってた
来栖
来栖
会って、栞那を充電しないと
そろそろ俺が限界だった
栞那
栞那
っ、
来栖
来栖
なのに、あんな電話1本で
終わってやると思ってんのか?
髪の毛を絡めとる、来栖さんの長くて綺麗な指がくすぐったい。

耳にかかる吐息。
わざとやってるなら、確信犯すぎる。

……来栖さんの言葉は嬉しいのに、ここですんなり来栖さんに甘えたらいけない気がしている。

来栖さんの未来のために、今ここで私は身を引かなくちゃいけないんだから。
栞那
栞那
……良かった。
最後にこうして会えて。
顔見て、さよならでき、
来栖
来栖
……諦めろ。
俺は、離してやる気はねぇ
栞那
栞那
……っ、く、来栖さんっ
来栖
来栖
離してなんかやらない
来栖
来栖
もう……俺と別れるなんて、
2度と言わせねぇ
私を抱き締める力を緩めて、私の顔を見つめる来栖さんの強い瞳にもう何も言えなくて。

……すぐにでも来栖さんに甘えたくなってしまう。
栞那
栞那
だけど、っ
来栖
来栖
俺以外の男とキスしたことに
罪悪感、感じてるんだったっけか
栞那
栞那
……っ!?
来栖
来栖
キスっていうのは、
こういうのを言うんだよ
栞那
栞那
───っ、!!
私の後頭部を支えるように添えられた来栖さんの手にグイと力が入って、

そのまま、2人の距離が一瞬でゼロに変わった。
触れるだけの優しいキスが角度を変えて何度も降ってくる。
来栖
来栖
……っ、もう知らね
栞那
栞那
っ、ん
漏れる吐息すら、欠片も逃がしたくないとばかりに激しさを増すキスの雨。息が苦しくなって口を開けたら最後、いとも簡単に、来栖さんの侵入を許してしまう。
栞那
栞那
……んん!!
膝はガクガクと笑いだして、脳に酸素が足りない。
抵抗するには弱すぎる力で来栖さんの胸を叩けば、やっとキスの雨がやむ。
来栖
来栖
罪悪感なんて感じるのは
ここまでしてからにしろ
来栖
来栖
……俺以外の男としたキスなんて
それこそノーカンの法則だ
栞那
栞那
っ、はぁ……はぁっ、
呼吸が乱れて整わない私を、息1つ乱れていない来栖さんが笑う。

……あぁ、もう。こんなのズルい。
来栖
来栖
俺に本気のキスさせたからには
責任取って、ずっとそばにいろ
栞那
栞那
……うん……うん!
離れられるわけがない。
……好きで、好きで仕方ない。

きっと私は、この人にだけは敵わない。