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第17話

バイバイ、しよう。
打ち上げが終わったのは21時をすぎた頃。
これから2次会へ行くメンバーと、帰路に着くメンバー半分半分。

私は未成年ということもあり、かおるちゃんに送ってもって帰宅した。
栞那
栞那
ただいま〜
もちろん、誰から返事がある訳でもない。

実家にいた頃は当たり前だった「おかえり」が、当たり前じゃないんだと知って、最近は恋しくなったりもする。

電気をつけて、ソファに沈み込む。
栞那
栞那
はぁ〜……
1人になると、考えてしまう。

今日の電話で中野さんが言っていた言葉。
「自分の幸せと来栖さんの幸せを天秤にかけてみて……?」

私の幸せは、来栖さんと一緒にいること。
来栖さんがいる未来。

電話で中野さんが言っていたことを、頭の中で整理する。どうやら、中野さんのお父さんは警視長という役職者らしい。

近々来栖さんが受験する昇任試験に、中野さんのお父さんなら多少の協力が出来るんだとか。

もちろん、中野さんと来栖さんが結婚したら……来栖さんは警視長の婿。警察官としての地位も確立されていくんだろう。
栞那
栞那
それに比べて……私は、
来栖さんに何ができるんだろう
……未成年。ましてや、高校生で。
堂々と来栖さんの彼女だって言うことも出来ない。

芸能活動をしている私は、普通の恋人たちのようにデートには繰り出せないし、忙しくなると会える頻度もグンッと減る。
栞那
栞那
その度にすれ違って……
栞那
栞那
勝手に不安になって
栞那
栞那
来栖さんの重荷でしかない
来栖さんにとって、私といるメリット。
……考えて、考えて、考えて、考えても。

ひとつも思いつかない。

それが、答えだと思った。
私と付き合ってることと、中野さんと結婚すること。来栖さんにとってプラスになるのは、後者だと。
栞那
栞那
……もし、
私と付き合ってることがバレたら
来栖さんはどうなるのかな
大好きな仕事、続けられなくなる?
”未成年に手を出した警察官”なんて、後ろ指さされる?

分かりにくいけど、あんなにもストーカー被害者のことを考えてくれる警官はいない。

来栖さんは、警官に向いている。私なんかのせいで、大事な仕事を失うことだけはして欲しくない。

なんだ。
来栖さんのこれからに必要なのは、私じゃない。
私が身を引いたら、来栖さんの未来は安泰なんだ。
栞那
栞那
……言えるかな、バイバイって。
泣かないで言えるかな
栞那
栞那
せめて……、
最後に、一度だけでいい。
恋人として甘い時間を過ごしたかった。

だけど、それをしてしまえば私は、バイバイが言えなくなる。きっと、欲張りになって来栖さんを離してあげられなくなる。

───だから。

スマホを耳に押し当てて、嗚咽を押し殺す。
私は女優だ。……演じきれ、栞那。
来栖
来栖
もしもし
栞那
栞那
……あ、もしもし。
来栖さん?
来栖
来栖
打ち上げ終わったのか
今日、打ち上げが始まる前、忙しくて返信はないだろうと思いつつも【これからドラマチームの打ち上げに参加してくるね】とだけメッセージをいれていた。
栞那
栞那
うん、さっき……帰ってきた
来栖
来栖
俺もさっき仕事が終わったとこだ
栞那
栞那
遅くまで、お疲れ様。
あ、あのね……
来栖
来栖
なんだ、
……なんかあったのか
電話の向こうで聞こえた踏み切りの音。
来栖さんは、どうやらまだ外らしい。

別れを告げようとだけ決めて、決意が鈍らないうちに電話をかけたのはいいけれど、肝心の別れる理由を考えていなくて。

……なんて切り出そうか、困ってしまう。
栞那
栞那
……ここ最近、私と来栖さん
ずっとすれ違いばっかだよね
栞那
栞那
私のドラマが決まってから
私も忙しくなったし……
来栖さんも仕事が忙しくなって
来栖
来栖
……何が言いたい?
栞那
栞那
1ヶ月会えないだけで……
たった1日返信がないだけで寂しかった
栞那
栞那
来栖さんの近くに自分以外の
女の人がいるってだけで不安だった
栞那
栞那
いつになっても
私の好きの方が大きくて
栞那
栞那
背伸びは出来ても、
大人になんて全然なれなくて……っ
言い出したら、止まらなかった。

今日まで抱えてきた不安、寂しさ、それ以上に来栖さんを大好きな気持ち。
来栖
来栖
栞那、
栞那
栞那
私と付き合ってたら!
人目を気にしなきゃいけない
付き合ってること誰にも言えないし
大事な時にそばにいられないかも
栞那
栞那
それと、ドラマのラストシーンで、
池松煌とキス、した。
不意打ちで……、ごめん
来栖
来栖
っ、
栞那
栞那
この先も、ドラマのたびに、
キスシーンがあるたびに、
来栖さんに嫌な思いをさせて
私は罪悪感を感じる……
栞那
栞那
……そんなの、やだ
ありったけの、それっぽい理由を並べて。
私は、最後に大きく息を吸った。
栞那
栞那
……バイバイ、しよう
もっと、早く生まれたかった。
もっと、早く出会いたかった。
もっと、一緒にいたかった。
もっと、好きって伝えたかった。

───来栖さん、今までありがとう。