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第7話

ドラマ撮影は多難
ついに来てしまった。
今日から2話の撮影が始まる。

何日かに分けて撮影するうち、キスシーンの撮影があるのは初日の今日。

来栖さんはキスシーンについて、仕方ないと理解を示してくれつつ、とは言ってもやっぱり良い気はしない……という感じで。
栞那
栞那
……嫌だって思ってくれてるなら
キス、してくれたらいいのに
もちろん、先に来栖さんとキスをしたからって、池松煌とのキスシーンOK!ってわけじゃないけど。

【撮影、頑張ってくるね!】

来栖さんにそれだけ送って撮影に向かおうとした時、ブブッとカバンの中でスマホが震えた。
栞那
栞那
嘘……返信、早っ
見れば、来栖さんから返信が来ていた。
来栖さん、仕事中のはずなのに。もしかしたら今日の撮影のこと気にかけてくれてたのかな?

それにしても……
栞那
栞那
【キスシーンはアドリブで回避しろ】
って……あはは、何それ
台本の中で決まってるシーンを、アドリブで回避するなんて、例え大物女優になっても不可能なんじゃ……?

【来栖さんより先にまさか俳優さんと
するなんて思ってなかった😝💋】

……送信ボタンを押してから、ちょっと嫌味だったかな?なんて思ったけど。これが私の本当の気持ちだから。

来栖さんにも届けばいい。
***

【ストーカー対策室】来栖side
中野 紗彩
中野 紗彩
せ〜んぱい♡休憩しません?
来栖
来栖
しねぇ
中野 紗彩
中野 紗彩
コーヒーいれましょうか?
来栖
来栖
いらねぇ
大野
大野
あ、中野ちゃん
俺にもコーヒー入れてくれる?
中野 紗彩
中野 紗彩
紗彩がコーヒー入れるのは
来栖先輩限定ですから。
大野先輩には入れませ〜ん
大野
大野
……あ、そうっすか
時計の秒針の音。
シャーペンと紙が擦れる音。
コピー機の稼働音。
遠くで聞こえる話し声。
俺の周りをうろちょろする新米女。
中野 紗彩
中野 紗彩
じゃあ、来栖先輩!
今日の夜って……
来栖
来栖
あー、うるせぇ!!
中野 紗彩
中野 紗彩
……っ!
全部、全部、耳障りだ。

スマホのディスプレイに新着メッセージはない。
撮影はもう始まったのか?

キスシーンとか、本気で有り得ねぇ。
しかも、相手は池松煌とかいうバラエティでもドラマでも引っ張りだこの人気俳優で……。

歳だって、俺より栞那に近い。

って、何をそんなに焦ってんだ俺は……勝てる要素が見当たんねぇからか?
大野
大野
こらこら、あんま
イライラすんなよ〜
来栖
来栖
……はぁ
大野
大野
ここんとこ栞那ちゃんと会えなくて
苛立ってんのは分かるけどさ〜!
もっとスマイル、スマ〜イル!
中野 紗彩
中野 紗彩
栞那……?
大野
大野
そ!モデルの倉木……あっ、
来栖
来栖
大野さん
口を滑らせた大野さんの『やべぇ』顔に、新米女は何かを察したらしい。
中野 紗彩
中野 紗彩
嘘……モデルの倉木栞那と
付き合ってるんですか!?
……あぁまじで、心底面倒くせぇ。

俺に両手を合わせて念仏にも近い言葉で謝罪を述べる大野さんに「ちょっと外の空気吸ってきます」とだけ告げて、俺は事務所を後にした。
***

外に出て、ひとつ深呼吸。
ポケットの中で小さく震えたスマホを取り出せば、そこには栞那からのメッセージ。

【撮影、頑張ってくるね!】
来栖
来栖
頑張んなくていいっつーの
キスシーンなんて、演技とは言え浮気宣告されたような気分だってのに。

柄にもなく子供じみた返信をして、後悔。
ここはグッと堪えて大人の対応をすれば良かったか、なんて。

すぐにまたスマホが震えて、栞那からの返事。

【来栖さんより先にまさか俳優さんと
するなんて思ってなかった😝💋】
来栖
来栖
……ばか
【俺が先に決まってんだろうが】

そこまで打って、送ろうか迷う。
……でも、どこぞの俳優とのキスが先だと思われるのも癪だからと俺は半ば投げやりに送信ボタンを押した。
***

栞那side

初めての主演に悪戦苦闘する私とは反対に、池松煌はアドリブ連発で私の反応を楽しんでいる。

悔しいけどやっぱり演技は上手だし、アドリブの才能もある。
栞那
栞那
もっと、頑張らなきゃ……
次はいよいよキスシーン。
監督
じゃあキスシーン行ってみようか!
ドキドキと早鐘を打つ心臓。
初めてのキスシーンに、無理やり覚悟を決めたとき
監督
キスはしてる風でいこう!
栞那
栞那
えっ……!?
監督の言葉に、思わず驚きの声が漏れた。
……今、してる風って言った?
池松 煌
池松 煌
なに?
そんなに俺とキスしたかったわけ?
栞那
栞那
……っ違!
私の反応をみて、意地悪く笑う池松煌にムッとしつつも、内心かなりホッとしている。

……良かったぁ。
***

無事に”したふり”のキスシーンを終え、今日の撮影が終了した。

控え室に戻ってすぐ、来栖さんにキスシーンについて報告しなくちゃ!とスマホを手に取れば……
栞那
栞那
う……嘘!
来栖さんから来ていたメッセージに、私は目を見開いた。
【俺が先に決まってんだろうが】
【いつも寝てるから、お前の記憶にないだけだ】
栞那
栞那
お、起きてる時にしてよ!!
来栖さんのばかぁ……