第3話

恋敵と書いてライバルと読む
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2019/02/13 12:58
 『恋の敵』と書いて『恋敵=こいがたき』、若しくは『ライバル』と読む。それは、私の人生においてはじめて現れたジャンルの登場人物だった。
 小・中学生の頃までは、例えばイイなって思う男子がいたら、友達と「○○君ってかっこいいよねぇ」なんて盛り上がって話しているのが楽しい日々だった。もしその○○君が、誰かと両思いになったりしたって聞いたなら「○○君はもう□□ちゃんのモノだから」なんてあっさりと、次のかっこいい「ときめき男子」を見つけだしたりしていたっけ。
 ナッちゃんと横倉くんはお似合いだ、と思う。バスケ部の部長さん同士だし、小学校の頃からの幼なじみだって言うし。でもナッちゃんの告白を聞いても、私は何故か今までみたいにあっさりとさぁ次だ、なんて考えることが出来そうになかった。


 横倉くんを見ていたい。
 横倉くんとおしゃべりしたい。
 横倉くんをもっと知りたい。


 たとえ「フリースロー」の名前すら知らなかったとしても。


 簡単にチェンジできるような気持じゃないって、心が叫んでいる。


「ハナ」
「へ?」


 突然の恋敵からの声掛けに、今日なん度目かの間の抜けた返答を返してしまい慌てる。ナッちゃんになんて言われてしまうんだろう。「横倉くんのことはあきらめて」だろうか。この窓からこっそり(のつもりだった。あっさり気づかれていたけれど)眺めることさえも出来なくなってしまうのだろうか。ムリ。そんなの絶対ムリ。給食のデザートならいくらでも譲ってあげられる。でもこれだけは……。


(……あ)


 大変なことに気づいてしまった。もしかして二人はすでに『おつきあい』をしているのではないだろうか。だとしたら、ナッちゃんが「あきらめて」と私に告げる確率は断然高くなる。もし、そうだとしたら……


「あ、……雨」


 いつの間にか、窓の外は大粒の雨が降り注いでいた。屋上練習は中止だろうか。雨のカーテンが、もうこの先は見せないよ、とでも言いたげに、窓の向こう音を立てて視界を揺らしている。
 雨の日は嫌い。横倉くんを見ることができないから。
 そして私はもう、晴れの日にも彼を目で追うことを許されなくなってしまうのだろうか。
 キリキリと、胸が痛みはじめたそのとき


「ハナ」


 ナッちゃんが、もう一度私を呼んだ。


「告白しようよ」
「はへ?」
「颯人に」
「ふえ?」
「二人で同時に」
「へぇ?!え、ええぇぇ───────っ」


 今日の私には、心臓が五つくらい必要だと思った。

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