~義勇サイド~
朝、校門で生徒指導をしていると
派手な身なりをした男が、
腕組みをして立っていた。
宇髄は、なにせ背が高く、
すこぶる派手なので
通行人の注目を集めていた。
何のために来たのか、
見届けたかった。
宇髄は俺には反応しない。
前世の記憶はないのかもしれない。
そのうちに、
あなたが登校してきた。
あなたは、チラリと宇髄を見る。
目立つからな。
そりゃ見るだろう。
すると…
ちょっと待て…!!
なぜに宇髄があなたを?
そしてあなたは、
なぜ宇髄を知っている!!
昨日とは何のことだっっ…
~あなたサイド~
義勇くんに、車の事故のこと
バレちゃう…。
きっとめちゃくちゃ怒られる。
赤信号を見なかったなんて
バカだなって…。
胸がドキンとした。
まさか…まさかね。
宇髄先生の言葉は聞こえていたが、
意味を理解するには、数秒かかった。
わたしたちのまわりに、
人が集まり始めている。
感激で頭がしびれた。
遅れて、涙があふれ出す。
よろけるわたしの肩を、
義勇くんが支えてくれた。
すごい言われようだ。
でも、ずばり自分でも気にしていたことだ。
尊敬する宇髄先生が、
わたしの小説を読み、
こんな風に褒めてくれている…。
それだけでもう、感無量だった。
涙が止まらない。
受賞のしらせは、
瞬く間に学園中に知れ渡り、
すっかりわたしは時の人となった。
でも…
小説なんて書かなければよかった。
そう後悔することになるとは、
この時のわたしは思いもしなかった。
今まで生きてきて、一番大きな試練が
わたしを待ち受ける──
Next「つかの間の休息」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!