第20話

信じろ
3,261
2020/10/24 07:00
~義勇サイド~

次の日、やはりあなたは
学校には現れなかった。

5日間の停学なんだから、
来るわけはないが…。

竈門禰豆子の話によると、
携帯も取り上げられているらしい…。
冨岡義勇
冨岡義勇
(あなた…おまえに会いたい…)


***

体育教官室。
錆兎
錆兎
おい義勇、大丈夫か?
冨岡義勇
冨岡義勇
何がだ?
錆兎
錆兎
何がって…

ひどい顔だぞ
飯、食ってるのか?
冨岡義勇
冨岡義勇
ああ…
……。
錆兎
錆兎
おまえがそんなん、なっちまうなんて
おとなりのあなたちゃんのことか?
冨岡義勇
冨岡義勇
なんでわかるんだ
錆兎
錆兎
一応これでも、
おまえの友達だからな
冨岡義勇
冨岡義勇
錆兎…
錆兎
錆兎
ほら…飲め
冨岡義勇
冨岡義勇
すまない…
錆兎が、眉を寄せ、
この上なく優しい顔で
俺に、温かいお茶を寄こしてくれた。
錆兎
錆兎
おまえがいつも言ってた“あなた”って
2-Aの如月だろ?
冨岡義勇
冨岡義勇
なっ…
錆兎
錆兎
掲示板の名前を見て、ピンときたさ
加えておまえのその、
落ち込みっぷり
冨岡義勇
冨岡義勇
ああそうだ
あなただ…
錆兎
錆兎
やっぱりか
おまえかわいがってたもんなぁ
冨岡義勇
冨岡義勇
今でもかわいい…
錆兎
錆兎
ふっ…
やれあなたがどうしたああしたと、
おまえの頭ん中は、
あなたちゃんでいっぱいだもんな

奥さん妬かないのか?
冨岡義勇
冨岡義勇
奥さん…か

俺が一番大切なのは
あなただ
つまり、奥さんなのだが…。
この先も妻でいてくれるだろうか…。

自信がなくなりそうだ…。
錆兎
錆兎
ふ…む
冨岡義勇
冨岡義勇
あなたの俺への思慕を
愛情だと、俺はかんちがい
していたのだろうか…

父性…なのか…
錆兎
錆兎
あなたちゃんは、両親亡くして
おまえが親代わりしてたんだろ?
そりゃ、そういう面もあるだろうな
冨岡義勇
冨岡義勇
接し方を…
まちがえたのかもしれない
錆兎
錆兎
申し分ない女の子に
育ってくれたんだろ?
冨岡義勇
冨岡義勇
ああ
俺にはもったいないくらいにな
錆兎
錆兎
なら、まちがえちゃいなかったさ
冨岡義勇
冨岡義勇
錆兎…
錆兎
錆兎
あなたちゃんはおまえに、
全幅の信頼を寄せてると思うぜ
冨岡義勇
冨岡義勇
そう…思うか?
錆兎
錆兎
ああ、そんなあなたちゃんが
時透と一晩でどうこうなるとは
考えにくいな
冨岡義勇
冨岡義勇
そう思いたいが…
考えると、胸がつぶれそうだ
錆兎
錆兎
何か…事情があるんだと思うぜ?
元気出せよ、義勇
錆兎と話していると、
気持ちがいくばくか、楽になれた。

水が流れるように、俺の感情に
自然に寄り添ってくれた…。

錆兎…ありがとう…。


***

そして、放課後。
部活を終え、帰宅しようとした俺は、
怪しい男に、ヘッドロックされた。
冨岡義勇
冨岡義勇
なんだっ…?誰だ!?
不死川実弥
不死川実弥
よォ…
冨岡義勇
冨岡義勇
不死川!?
不死川実弥
不死川実弥
飲みに行くぞォ…
冨岡義勇
冨岡義勇
すまないが
そんな気分では…
不死川実弥
不死川実弥
いいから行くぞォ
話あんだよ
冨岡義勇
冨岡義勇
話?
不死川実弥
不死川実弥
決まってんだろォ
あなたのことだ
冨岡義勇
冨岡義勇
あなたのこと…?


不死川に連れられて入ったのは、
個室の居酒屋だった。
不死川実弥
不死川実弥
ここなら、誰かに聞かれる
心配はねぇ…

なァ…水柱サン
冨岡義勇
冨岡義勇
…ッ!!
あるのかっ…不死川もっ…!!
前世の記憶がっ…
不死川実弥
不死川実弥
ああ…
昔は世話んなったなァ
冨岡義勇
冨岡義勇
不死川…本当に…
ニタァと笑みを浮かべる顔は、
風柱である、不死川そのものだった。

記憶…あるんだな。

ならば、あなたのことも!?
不死川実弥
不死川実弥
おったまげたぜ
あなたが入学してきた時はよォ
やはり…!!
冨岡義勇
冨岡義勇
あなたは俺と結婚している
手を出すなよ
不死川実弥
不死川実弥
結婚?マジかぁ…

っておい、
そんな話しに来たんじゃねぇぜ

俺は許せねぇんだよ
冨岡義勇
冨岡義勇
何がだ?
不死川実弥
不死川実弥
時透のことだ
冨岡義勇
冨岡義勇
それは…
不死川実弥
不死川実弥
ちゃんとつかまえとかねぇと
俺があなたを奪っちまうぞ
冨岡義勇
冨岡義勇
ふざけるなっ…!!
不死川実弥
不死川実弥
フフン
ちったぁ、血の気戻ったみたいだな
冨岡義勇
冨岡義勇
不死川…
不死川なりに、
渇を入れてくれているらしかった。

俺にはいつの間にか…
錆兎以外にも、友がいたのだな…。
不死川実弥
不死川実弥
掲示板のやつなぁ、
すまねぇ、多分俺のせいだ
冨岡義勇
冨岡義勇
どういうことだ?
不死川実弥
不死川実弥
あいつら授業に集中してねぇから、
プリント100枚出したんだ
冨岡義勇
冨岡義勇
100枚!?
それで図書室に…
不死川実弥
不死川実弥
他の生徒の手前、
あなただけ特別扱いできねぇからな
冨岡義勇
冨岡義勇
それは…そうだろう
不死川実弥
不死川実弥
おおかた、終わらなくて
徹夜でもしてたんだろうよ

そんで、寝ちまったんだろ
冨岡義勇
冨岡義勇
そう…なのだろうか
不死川実弥
不死川実弥
信じろよ
あいつは前世じゃあ、
俺にかみついたほどの女だぞ
冨岡義勇
冨岡義勇
…あなた
不死川実弥
不死川実弥
芯の強い女だ

おまえに心底、
ほれてんだろうがァ!!
冨岡義勇
冨岡義勇
…ッ!!
不死川実弥
不死川実弥
おまえが信じてやらねぇで
どうすんだよ

今ごろ一人で泣いてるぜきっと
あいつには、おまえしかいねぇんだろ
冨岡義勇
冨岡義勇
そうだ…あなたには俺しか…!!
不死川実弥
不死川実弥
余計なこと考えんな
信じろ
頬を叩かれたようだった。

不死川の言う通りだ。
そうだ、あなたには俺しかいない。
冨岡義勇
冨岡義勇
すまない不死川…
ありがとう
不死川実弥
不死川実弥
ったく
世話が焼けるな
俺は…ようやく顔を上げ、
前を向くことができた。

あなた…俺はおまえを信じる。




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