~あなたサイド~
結局、時透くんとのメモは、
不死川先生がポケットに入れてしまった。
しばらく校内では、義勇くんには
話しかけられないな…。
ガラッ
帰りのホームルームでも
わたしはずっと、
義勇くんを見ないようにした。
見ると…会いたくなっちゃうから…。
***
そして放課後。
大量の数学プリントを、
不死川先生にもらいに行った。
コンコン
ドサッ…
プリント100枚だ。
不死川先生、お手製の。
かなり厚みがある。
どーしよ本当…。
明日までなんて、絶対無理…。
不死川先生がまた…
ふいに優しい顔をしたので、
ちょっとドキンとした。
髪をくしゃっとして
少し横を向くしぐさは、
いつものこわい先生とは違って、
素敵だった。
***
そして…
何気に、時透くんって
学年上位だった気がする。
助かった…!
***
図書室。
人は、まばらだ。
時透くんが、
わたしのプリントをのぞき込むと、
長い髪がわたしの手元にかかる。
ち、近い…/////
やば…意識しちゃう。
わたしったら…。
意識しすぎたかな…/////
時透くんは、さすがだった。
説明がわかりやすいし、
すごい勢いでプリントが片付いていく。
もう半分は、やっただろうか。
ふいに時透くんが、
わたしの手首をつかんだ。
見た目より、力強い…。
思えば、義勇くん以外の男の人に
好きとか言われるのは初めてだ。
ましてや同世代の男の子なんて…。
いつも、義勇くんが
近寄らせないよう、守ってくれていたから。
時透くんが、にっこりと笑い、
手を離した。
び、びっくりしたぁ…。
断らないと…。
でも、どう言ってもきっと
時透くんを傷つけちゃう。
こんな時…どうしたらいいかなんて…
誰も教えてくれなかったよ…。
そもそもカナヲがいるし!
わたし一人じゃ終わらないのは確実だから
来てもらうしかない…か。
義勇くん…ごめんね…。
男の子を部屋に上げるなんて
義勇くんが知ったら、
竹刀持って飛んでくるよね…。
勉強のため…だけど…。
会いたいときに会えないなんて…。
義勇くんのつけた、胸の赤いキス痕が、
チクッと痛んだ。
Next「夜の女子寮」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。