第12話

冷たい雨
3,487
2020/10/14 07:00
~あなたサイド~


義勇くんとケンカして、飛び出したわたしは、
あてもなく歩いていた。
あなた
なんだか…前より
義勇くんが遠い…
あなた
結婚…
しなければよかったのかな…
義勇くんを想うと、
自然と涙があふれた。

ポツッ…サァァ…
あなた
雨…かぁ
霧のような雨だった。

昔…

義勇くんの羽織を傘代わりに、
雨の中、義勇くんと寄り添って
歩いたような記憶がある。

お墓参りの帰りで、日が暮れて…。
あなた
あれは…
誰のお墓参りだったんだっけ
義勇くんの大切な友達…
野原で花をつんで…。
あなた
あの時は優しい雨だったけど、
今日は冷たい…
あの時、野原で会った女の子、
禰豆子に似てたなぁ…。
あなた
これは、記憶…かな?
夢かな?
気がついたらわたしは、
寮に帰ってきてた。

…着物のままだった。
あなた
もう部屋で寝よう…



~義勇サイド~
俺は、出て行ったあなたを
探して歩いた。

実家…にはいなかった。
ともすると、寮か。
冨岡義勇
冨岡義勇
あなた…
おまえを抱きしめたい…
この雨の中、どこを歩いているのだろうか。
冷たい雨だ。

そばで…温めてやりたい…。
冨岡義勇
冨岡義勇
寮まで来てしまった
あなたの部屋の灯りがついているが…
同室の栗落花つゆりかもしれない…。


門にいる、守衛に聞いてみた。
冨岡義勇
冨岡義勇
2年A組の担任、体育の冨岡だ

着物を着た女生徒が
ここに帰ってこなかったか?
守衛
ああ、それならさっき…
なんか泣いていましたが…

生徒が何かトラブル起こしましたか?
冨岡義勇
冨岡義勇
いや…
帰っているならいいんだ
守衛
先生、休みの日にまで大変ですな
冨岡義勇
冨岡義勇
そんなことは…
寮に帰ったのだな。

なら安心だが…。
冨岡義勇
冨岡義勇
あなた…今日はもう、
会えそうにないな
俺は、なすすべもなく
きびすを返した。




~あなたサイド~


カチャ…
あなた
ただいま…
栗落花カナヲ
栗落花カナヲ
あなた…着物!?
濡れてる…
あなた
うん…
栗落花カナヲ
栗落花カナヲ
…はい、タオル
お風呂…
あなた
うん、入ってくるね…
お風呂から上がると、
カナヲが温かいハーブティーを
いれてくれていた。

それと、小皿にラムネ。
あなた
カナヲ…ありがと…
甘く爽やかな香りが、安らぐ…。

カナヲがこんな風に、
わたしに関わってくれるのは初めてだ。
栗落花カナヲ
栗落花カナヲ
冨岡先生と何かあったの…?
あなた
えっ…なっ…
知ってるの!?
栗落花カナヲ
栗落花カナヲ
義勇くん…って
冨岡先生でしょ
あなた
や、ちがっ…

…くない…けど…
ななな、なんでっ…!?
栗落花カナヲ
栗落花カナヲ
大丈夫よ、
誰にも言うつもりもないし…

それに…冨岡さん…
昔から知ってる…
あなた
えっ…昔から!?
なんでっ?

冨岡さん!?
栗落花カナヲ
栗落花カナヲ
ふふ…
そう聞いてもカナヲは、
優しくほほ笑むばかりで、
何も言わなかった。
栗落花カナヲ
栗落花カナヲ
冨岡さんは、昔から
口下手で…誤解されるの

あなたも…
本当はわかっているんでしょ?
あなた
うん…

義勇くんはそれで、
友達も少なくって、よく孤立してて…
栗落花カナヲ
栗落花カナヲ
離れちゃ…ダメよ…?
あなた
うん…
不思議…。

なんだか、カナヲは本当に
義勇くんを昔から知っているようだった。

でもそれがスッ…と、わたしの中に入ってきて、
すんなり受け入れられた。
あなた
ありがと…カナヲ…
義勇くん…。

義勇くんには、わたししかいない。

あんな風に出てきちゃって…
きっと傷つけた。

でも…
義勇くんだって、会わない方がいいとか
ひどいこと言って…。

あ~っ…
もー。

寝よっ…!!
栗落花カナヲ
栗落花カナヲ
仲直り…できるといいね
あなた
明日…話してみる
栗落花カナヲ
栗落花カナヲ
それがいいよ…
ハーブティーとともに、
やるせない気持ちを飲み込むと、
布団にもぐり込んだ。

こんな夜に、
一人じゃなくてよかった…。




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