~あなたサイド~
わたしは宇髄先生の家で
お世話になることになった。
さすがは、売れっ子小説家。
宇髄先生の家は、高い外壁に囲まれ、
伝統的な屋根瓦が見事な、
立派なお屋敷だった。
宇髄先生のお嫁さん…かな?
先生に勝るとも劣らぬ、
明るくて派手な美人さんが
出迎えてくれた。
でも四人目って、どういう意味かな。
お嫁さんが三人いるの??
…そんなわたしの疑問を見透かしたように
宇髄先生のお嫁さんが教えてくれた。
籍は入れてないけど、
事実上は妻ってことかな?
そんな世界もあるんだなぁ…。
わたしにはちょっとわからなかった。
義勇くんにわたしの他にも
お嫁さんがいたら…。
無理無理っ…!!
三人…
やだ、想像しちゃった/////
禁断の果実…よね/////
***
宇髄先生の家では
本当によくしてもらった。
お嫁さん達のお料理は本当においしいし
(フグなんて初めて食べた!)、
お風呂は、高級旅館みたいな桧だった。
コンコン
宇髄先生が渡してくれたのは、
手紙のようなものの束だった。
わたしは、渡された束を
しっかりと胸に抱きしめた。
わたしたちを応援してくれる人がいる…。
そうなんだけど…。
世の中から向けられる
底知れぬ悪意のような渦に、
わたしはもう限界だった。
つらい。
宇髄先生が、優しい顔で
わたしの頭をまたなでてくれる。
小説家として、
趣味だけではやっていけないのは
わかるけど…。
こんな気持ちで、書けるわけはなかった。
今はただ、
義勇くんに会いたい、
会いたいよ…。
宇髄先生がわたしにこだわるわけは、
本当にわからなかった。
なんだろう…
宇髄先生としては言い方が感情的で
理屈が通ってないけど…。
本気でわたしと義勇くんを
応援してくれているっていうのは、
ひしと伝わってきた。
Next「宇髄家で…」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!